痛みの生理・心理・社会学的理解(ワークショップ:日常診療における"困った痛み"をどう考える?-心理士のための難治性疼痛の理解-,2013年,第54回日本心身医学会総会ならびに学術講演会(横浜))

  • 村上 正人
    日本大学医学部内科学系呼吸器内科学分野:日本大学医学部附属板橋病院心療内科

書誌事項

タイトル別名
  • Physiological and Psychosocial Understanding of Intractable Pain(Workshop/How to Deal with "Unmanageable Pain" in Clinical Practice - Knowledge of Intractable Pain for Clinical Psychologist)
  • 痛みの生理・心理・社会学的理解
  • イタミ ノ セイリ ・ シンリ ・ シャカイガクテキ リカイ

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抄録

心療内科にはしばしば長期化,遷延化した臨床経過を有する痛みの患者が紹介されて受診する.この慢性疼痛の発症には,身体的要因に加えて多彩なストレス要因が関与して病態が複雑化しているため対応に苦慮することが多い.望ましい治療を行うためには,医師のみならず心理士も生理的,心理的,社会学的視点から痛みの背景を理解し,痛みの認知,痛みの抑制システムを知ることが重要である.慢性疼痛はストレスに対する病的反応であり,身体症状と心理的諸問題の間に心身相関が認められることが多いことから,心身症の代表的な病態であるといえる.痛みの病態は人生や日常生活で生じるさまざまな不安,抑うつ,怒り,過緊張,焦燥などの心理社会的諸問題が関与して大きく変動する.痛みに対する医学的対応や心理的アプローチの有効性を期待するためには,十分な病歴聴取や心身両面からの病態の理解が重要である.治療法として一般的な鎮痛薬は無効なことが多く,抗うつ薬,抗けいれん薬などを組み合わせて使用する.最近はオピオイド製剤も選択肢の一つとして考えられるようになった.情動的ストレスやパーソナリティ上の問題の解決と治療のためには,薬物療法に加え,認知行動療法,交流分析,ブリーフ療法,その他の専門的心理療法の組み合わせの有効性が期待できる.このように難治性の慢性疼痛の病態評価や治療のためには心身医学的な視点からの配慮が重要である.

収録刊行物

  • 心身医学

    心身医学 54 (5), 398-406, 2014

    一般社団法人 日本心身医学会

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