人工透析の直接医療費とQOLに関する研究

書誌事項

タイトル別名
  • The Direct Medical Costs and the Quality of Life in Patients with Artificial Dialysis and Type 2 Diabetes
  • 人工透析の直接医療費とQOLに関する研究--透析非糖尿病、透析糖尿病および非透析糖尿病患者間の比較
  • ジンコウ トウセキ ノ チョクセツ イリョウヒ ト QOL ニ カンスル ケンキュウ トウセキ ヒトウニョウビョウ トウセキ トウニョウビョウ オヨビ ヒトウセキ トウニョウビョウ カンジャ カン ノ ヒカク
  • —透析非糖尿病,透析糖尿病および非透析糖尿病患者間の比較—

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抄録

本研究は,1)人工透析患者の医療費,2)糖尿病ではない透析患者(以下,透析非糖尿病患者),糖尿病の透析患者(以下,透析糖尿病患者)および透析をしていない糖尿病患者(以下,非透析糖尿病患者)のquality of life (QOL)の比較,3)透析非糖尿病患者,透析糖尿病患者,非透析糖尿病患者のQOLに影響を与える因子の解析を目的とした.松島医院で治療中の透析患者106名の診療報酬明細書(2004年)を調査したところ,1人あたり1カ月医療費は428,788±44,249 (Mean±SD)円であった.このうち70名にKDQOL-SF(腎疾患特異的尺度+包括的尺度)を実施したところ,総合評価は透析非糖尿病患者63.94±15.96 (Mean±SD)点,透析糖尿病患者47.32±17.39点であった(p=0.00001). 透析糖尿病患者24名と京都大学附属病院に通院する非透析糖尿病患者87名の両者を併せて包括的尺度(SF36)のスコアを合併症別にみると,合併症なしで73.09±9.57点,合併症1種類67.71±8.33点,2種類60.17±8.61点,3種類37.94±9.24点,4種類36.42±14.52点と合併症の数が増えるにつれ総合評価は低くなった.また本来,腎疾患患者に対して行うべき腎疾患特異的尺度の測定に加えて,同じ測定項目を非透析糖尿病患者に実施した.将来,人工透析を行うことになった場合を想像してもらいアンケートした「腎疾患(透析)の日常生活への影響」,「腎疾患(透析)による負担」の項目は,非透析糖尿病患者のほうが透析患者よりスコアが低かった.透析患者のKDQOL-SFの各項目と非透析糖尿病患者の包括的尺度(SF36)の各項目に影響を及ぼす要因を重回帰分析したところ,透析患者は年齢の上昇・同居者なし・朝の透析・透析中にアンケートの回答した場合・他の疾病(合併症等)がマイナスに影響しており,非透析糖尿病患者は男女差が大きく同居者なしがマイナスに影響していた.KDQOL-SFでは,透析糖尿病患者のほうが透析非糖尿病患者よりすべての項目においてスコアが低かったことから,糖尿病をもつ患者が透析を導入した場合,QOLへの影響も糖尿病をもたない透析患者より一層低くなることが示された.また,1人あたり1カ月透析医療費は428,788(年間約514万円)と高額であった.これらのことから,医療費の削減やQOLを著しく低下させないためには糖尿病の1次予防とともに糖尿病を発症した後の2次・3次予防も重要であるといえる.

収録刊行物

  • 糖尿病

    糖尿病 50 (1), 1-8, 2007

    一般社団法人 日本糖尿病学会

被引用文献 (2)*注記

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参考文献 (14)*注記

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