大建中湯の腹証における「腹中寒」の意義

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タイトル別名
  • The Meaning of "Fukuchukan" in the Abdominal Symptom of Daikenchuto-syo
  • 臨床報告 大建中湯の腹証における「腹中寒」の意義
  • リンショウ ホウコク ダイケンチュウトウ ノ フクショウ ニ オケル フクチュウカン ノ イギ

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抄録

我々は,大建中湯の「金匱要略」条文中にある「腹中寒」を,他覚的な臍を中心とした冷感として認識できるのではないかと考え,検討を行った。<br>2004年12月から2006年11月までの2年間,当科において,臍中心の冷感を認め大建中湯を投与し効果判定できた90例を対象とした。症例は消化器症状を伴う群(消化器症状群)と伴わない群(非消化器症状群)に分け,各群の有効率と臍中心の冷感の変化を調べた。さらに有効例,無効例別に腹力,脈力を比較検討した。<br>消化器症状群は64例で,有効率は81.3%(52/64)であった。臍中心の冷感の変化を有効例,無効例別にみると,有効例の92.3%(48/52),無効例の41.7%(5/12)に改善がみられ,有効例で臍中心の冷感が改善した症例が有意に多かった(p<0.001)。<br>非消化器症状群は26例で,有効率は38.5%(10/26)であった。臍中心の冷感の変化を有効例,無効例別にみると,有効例の100%(10/10),無効例の43.8%(9/16)に改善がみられ,有効例で臍中心の冷感が改善した症例が有意に多かった(p=0.022)。<br>全90例について,有効例,無効例別に腹力,脈力を比較したところ,腹力は,有効例62例中,弱39例(62.9%),中等度以上23例(37.1%),無効例28例中,弱12例(42.9%),中等度以上16例(57.1%)で,腹力と大建中湯の有効性に明らかな関係はみられなかった(p=0.076)。脈力は,有効例62例中,弱34例(54.8%),中等度以上28例(45.2%),無効例28例中,弱11例(40.7%),中等度以上16例(59.3%)で,脈力と大建中湯の有効性に明らかな関係はみられなかった(p=0.221)。また,有効例のうち,腹力,脈力とも中等度以上の症例が13例あった。<br>以上より,消化器症状を訴える症例において,臍中心の冷感は大建中湯を使用する有用な目標になり得ると考えた。また,消化器症状がなくても臍中心の冷感のみを目標に大建中湯を投与することにより,消化器症状以外の症状を改善させることも可能と思われた。さらに,臍中心の冷感は,見出し難い大建中湯証を判別する手がかりになり得ると考えられた。

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