日本における旅行医学の普及に向けて

書誌事項

タイトル別名
  • General Remarks: For Promoting Travel Medicine in Japan
  • ニホン ニ オケル リョコウ イガク ノ フキュウ ニ ムケテ

この論文をさがす

抄録

第二次世界大戦後, わが国の旅行医学は長い間衰退期を過ごしたが, 1980年代後半になると経済発展が進み, 人や物の動きが世界的に活発かつ迅速となった。その結果, 国民所得が飛躍的に増加し, 海外旅行者が爆発的に増加するとともにアジア諸国に生産拠点を移す企業も出現し, 再び旅行医学の必要性が認識されるようになった。一方, 発展途上の国々では依然としてわが国では滅多に見られなくなった疾病や熱帯地域に特有の感染症が流行している。また, 新興感染症がときおり旅行者によって流行を拡大し世界を震撼とさせており, 旅行医学の重要性は増している。しかし, 欧米人と異なり日本人は, 長い間,国民皆保険制度の存在や予防接種なども国主導で行なわれてきたからか, 自分の健康は国や会社が守ってくれるという意識が強く, 自分の健康は自分で守るという意識に乏しい。まして海外旅行での健康については残念ながら無関心に近いのが現状である。今後は健康に関連することも今まで以上に自分の責任でこれに対応しなければならない時代になることが予想される。このような社会背景で今後わが国において旅行医学を推進するには, 関連学会が旅行業界や行政と密接に連携し, わが国における旅行医学のあり方を考えると同時に海外旅行での健康上のリスクの周知, そして自分の健康は自分が守るという意識を高める啓蒙活動が求められている。

収録刊行物

参考文献 (15)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ