動的筋収縮前の一過性の張力低下について

書誌事項

タイトル別名
  • SIGNIFICANCE OF TRANSIENT DECREASE IN SUSTAINED TENSION PRECEDING RAPID MUSCLE CONTRACTION IN MAN
  • ドウテキ キンシュウシュク マエ ノ イッカセイ ノ チョウリョク テイカ ニ

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抄録

本研究は, いわゆる動作前silent periodが筋収縮速度を促進する理由を明らかにする目的で行なった.そこで上腕屈筋群について, まず動作前silent period発現時の張力低下の有無を検索し, これと動的筋収縮との関連を検討した.つぎに張力低下時の筋の周径変化をラバーゲージにて検索し, これと筋力発揮時のレ線像の筋の動態とを対比した.そして筋伸展による筋収縮増強作用の関与を検討した.<BR>(1) 動作前silent period発現時に張力は低下した.その大きさは持続筋力値の約20%以下で, また張力低下期間は100msec以下と, 短時間に起こる張力変化であった.<BR>(2) 張力低下の発現率は, 動作前silent periodのものより高く, また動作前silent periodが発現しない時にも張力低下を認めた.しかし張力低下量は, 動作前silent period発現時程, 大となった.<BR>(3) 張力低下量と動的筋収縮との関連をみると, とくに筋収縮の初期速度の指標される, Time to half Pmaxとの間で有意な相関が示された.<BR>(4) 張力低下量と上腕囲減少量との間に, 正の相関が認められた.<BR>(5) レ線像で上腕二頭筋をみると, その近位及び遠位部に刺入した銅線先端の移動から, 筋力増加に従い筋腹中央部ならびに上腕骨上方へと, 筋が短縮する所見を示した.同時に, 筋腹中央部が漸次隆起するのを観察した.<BR>以上の成績から, 動作前silent periodは張力低下を増加させ, その増加に従い筋収縮の初期速度が速まるものと考えた.そしてこの筋収縮速度の促進は, 張力低下時の筋伸展と, その後の筋知覚系を介する機序の発動に帰因することが推察された.

収録刊行物

  • 体力科学

    体力科学 36 (3), 116-127, 1987

    一般社団法人日本体力医学会

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