上肢―波動運動の巧みさに関する研究

書誌事項

タイトル別名
  • STUDY OF CHARACTERISTICS OF WAVING MOVEMENTS IN UPPER EXTREMITIES
  • ジョウシ ハドウ ウンドウ ノ タクミサ ニカンスルケンキュウ

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抄録

新体操における上肢の波動運動の巧みさについて検討するために, 始めに熟練者1名について16mm映画撮影による動作分析を行なった。その結果, この運動の一つの特徴が肘関節の動きに認められた。そこでさらに鍛練者と非鍛練者各4名について, 波動運動の際の肘関節の機械曲線と三角筋, 上腕三頭筋および上腕二頭筋の筋電図を記録し, 両グループの比較検討を行なった。また, 両者の問で, 肘関節を屈曲伸展させる際に, 各々の動作を行う時間に違いのあることが認められた。そこで, 肘関節の動きに関与する上腕三頭筋の特性を検討する目的で, 収縮動作と弛緩動作の反応時を計測し, 巧みさとの関連を検討した。<BR>(1) 動作分析の結果, 肘関節の角度は平面的には10度前後, 上下方向には60~70度の範囲で変化していた。すなわち, 胴関節は楕円運動をしていた。<BR>(2) 肘関節の機械曲線から伸展時間, 屈曲時間および伸展角度, 屈曲角度を測定した結果, 鍛練者ほど伸展時間が長く, また, 運動時の上肢の位置の違いによっても差異は認められず, パターン化した傾向を示した。<BR>非鍛練者では, 体側挙上では伸展時間の方が多少長い傾向を示したが, 前方挙上ではほぼ同じか, 逆に屈曲時間の方が長かった。<BR>(3) 各被検者で肘関節の角度変化量に差異があるため, 伸展時間÷伸展角度 (TEE) および屈曲時間÷屈曲角度 (TFF) を算出した結果, 鍛練者ほど大きな値を示し, 1度当り変化するのに要した時間が長いことを示した。<BR>(4) (1) ~ (3) の成績から, 波動運動の巧みさは肘関節の伸展に関与する筋群の特性に依存すると考え, とくに上腕三頭筋について, 収縮動作 (CR) と拮抗筋の収縮に依存して弛緩する動作 (PR) および拮抗筋の収縮なしに弛緩する動作 (AR) の各々の反応時を計測してみた。<BR>その結果, CRとARとを比較すると, 鍛練者ではARの方が速い傾向を示し, 非鍛練者は逆にCRの方が速い傾向を示した。しかし, これらの間には有意差が認められなかった。CRとPR, ARとPRでは, 鍛練者ほどPRの方が有意に速い傾向にあった。非鍛練者は有意差を示したものとそうでないものが1/2つつで, 鍛練者との問に差異が認められた。<BR>したがって, 鍛練者ほど抑制系の応答が充分なされていることが示唆された。

収録刊行物

  • 体力科学

    体力科学 26 (3), 103-113, 1977

    一般社団法人日本体力医学会

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