妊娠個体における脂質代謝の研究

  • 中川 基
    京都大学医学部婦人科学産科学教室

書誌事項

タイトル別名
  • Studies on Fat metabolism in Pregnant Individuals
  • ニンシン コタイ ニ オケル シシツ タイシャ ノ ケンキュウ トクニ ニンラン ソシキ ノ シシツ タイシャ ニ ツイテ
  • —Especially about Foetus and its Accessories—
  • ―特に妊卵組織の脂質代謝について―

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説明

妊卵組織を中心とした妊娠個体の脂質代謝を動的な状態において把握すべく, 家兎肝, 胎盤, 胎仔肝, 晩期妊娠中毒症をも含めた妊娠各期の人胎盤, 人臍帯静脈血. 胎児肝などの総脂酸, 中性脂肪, 燐脂質, コレステリン(Ch), エステルコレステリン(E-Ch)およびオレイン酸, リノール酸(LE), アラキドン酸(AR)などの変動を諸条件下において比較検討した. まず家兎においては脂質の負荷によつて母体肝, 胎盤, 胎仔肝いずれの臓器組織においても諸脂質分画の増加がみられ, この中母体肝, 絨毛組織におけるE-Ch, 胎仔肝における燐脂質などの著明な増加は負荷された中性脂肪が胎盤絨毛組織において複合脂質化されさらに胎仔自体においても同様処理されることが明らかとなつた. 不飽和脂酸について検討したが絨毛組織, 胎仔肝ではLEよりARへの転換も円滑に行なわれていることを立証することができた.<br>妊婦についてほぼ同様脂質負荷して検討したところ, 正常妊娠時では胎盤におけるE-Ch, 臍帯静脈血および胎児肝における燐脂質の増加が著明に認められ, 家兎におけると多分に似た所見を得た. 不飽和脂酸構成についてはもともと胎児肝においてAR構成比は大きいのであるが, 脂質負荷により特に絨毛組織中AR分画に増大のみられることを明らかにし得た. そして負荷脂質の複合脂質化, LEよりARへの転換などの機能は時期的にみて妊娠末期において最も活溌に行なわれていることを認めた. しかるに晩期妊娠中毒症時では同じく妊娠時であるとはいえこの面において重大な支障のあることを指摘した.<br>要するに妊娠時に脂質を投与すると, それが本実験におけるごとく, 必須脂酸に富んでおれば妊卵組織において有意義に処理されており, この点における処理能力低下が妊娠中毒症時の胎児の発育障害などに何らかの関連を有していると結論した.

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