ヘリコプターによる母体搬送の経験

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タイトル別名
  • Experience of with a Helicopter transport of pregnant women
  • 診療 ヘリコプターによる母体搬送の経験
  • シンリョウ ヘリコプター ニ ヨル ボタイ ハンソウ ノ ケイケン

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抄録

京都府立与謝の海病院では,平成6年4月から平成19年12月までにヘリによる患者搬送が59例に行われた.搬送先は52例が京都市内の病院であった.疾患別の内訳は,心疾患が48例,周産期搬送は6例,うち母体搬送が4例,新生児搬送が2例であった.ヘリによる母体搬送の問題点について検討した.ヘリによる母体搬送のメリットは平均時速200km/hで運航するので速いこと,救急車と比べて振動の少ないスムースな搬送が可能で,デメリットは夜間や悪天候では飛べないこと,高度が上がると大気圧の低下に伴い,吸入酸素分圧が低下するためSpO2が低下してしまうなど,ヘリ搬送の母児への身体的・精神的影響については,いまだ明らかではない.ヘリには家族など付添人の同乗はできないため,緊急手術を要する搬送の場合でも家族の到着を待ってからでなければ術前説明ができないために手術開始が遅れてしまうことになり,ヘリによる短時間搬送のメリットが生かされないことになる.ヘリの機内は狭く,搬送中に処置を行うことは事実上不可能なので,必要な処置は搬送元病院ですべて済ませておき,ヘリは移動するだけに用いることが原則である.<BR>ヘリ救急について消防本部と十分に協議し,緊急に際して円滑に利用できる体制を確保することにより,ハイリスク妊婦に伴う高度医療機関への母体搬送の迅速な搬送は,防災ヘリでの活用により可能であった.今後は,緊急時の医療機関への救急搬送の迅速な受け入れ先決定と,ヘリおよび救急車による緊急搬送システムの円滑かつ柔軟な運用の確立を行うために周産期コーディネーターによる広域の母体搬送コントロールセンターの設置が近い将来必要である.〔産婦の進歩60(4):320-326,2008(平成20年11月)〕

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