異所性卵巣から発生した成熟嚢胞性奇形腫の1例

書誌事項

タイトル別名
  • A case of mature cystic teratoma originating in an ectopic ovary
  • 症例報告 異所性卵巣から発生した成熟嚢胞性奇形腫の1例
  • ショウレイ ホウコク イショセイ ランソウ カラ ハッセイシタ セイジュク ノウホウセイ キケイシュ ノ 1レイ

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説明

卵巣組織が正常卵巣とは別個に同定されることがまれにあり,これを異所性卵巣と呼び,多卵巣と副卵巣からなる.今回,われわれは異所性卵巣から発生したと考えられる成熟嚢胞性奇形腫の1例を経験したので報告する.年齢は38歳,4回経妊,2回経産.便秘を主訴に近医内科を受診し,腹部CT検査を施行したところ,子宮に接した石灰化を伴う腫瘤性病変が認められたため,当科に紹介となった.初診時,子宮右側に鶏卵大の腫瘤を触知した.子宮および左付属器に異常は認めなかった.経腟超音波検査にて,右付属器領域に境界明瞭な44×41×45mmの高エコーの壁をもつ嚢胞性病変を認めた.腹部CTでも,右付属器領域に辺縁high densityで内部low densityの腫瘤を認めた.腹部MRIでは右付属器領域に,T1強調像およびT2強調像ともにhigh intensityを呈し,脂肪抑制像でlow intensityを呈する腫瘤を認めた.左卵巣は正常であった.血液検査にはとくに異常は認められなかった.以上の所見より,術前診断を右卵巣成熟嚢胞性奇形腫の疑いと下し,腹腔鏡下腫瘍摘出術を行った.子宮および右仙骨子宮靭帯の後面に,直径4cm程度の腫瘍を認めた.腫瘍は腹膜に強固に癒着していた.両側卵巣は正常の部位に確認され,外表に異常は認めなかった.これら正常卵巣と腫瘍との間に連続性は認められなかった.腫瘍と腹膜との癒着を剥離し,これを完全に摘出した.その際,出血はきわめて少量で,腫瘍の栄養血管は確認できなかった.腫瘍壁は石灰化を認め全体に硬く,腫瘍内容は毛髪と角化物で石灰化を伴っていた.壁には原始卵胞はみられなかったが,紡錘形の莢膜細胞の増殖が認められた.これらから,多卵巣および異所性卵巣由来の成熟嚢胞性奇形腫と診断した.〔産婦の進歩60(2):65-69,2008(平成20年5月)〕

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