MRIで長期間経過を追い2度の妊娠・分娩を経験したcystic adenomatoid tumorの1例

  • 小椋 恵利
    京都大学大学院医学研究科器官外科学講座婦人科学産科学
  • 安彦 郁
    京都大学大学院医学研究科器官外科学講座婦人科学産科学
  • 山口 建
    京都大学大学院医学研究科器官外科学講座婦人科学産科学
  • 近藤 英治
    京都大学大学院医学研究科器官外科学講座婦人科学産科学
  • 馬場 長
    京都大学大学院医学研究科器官外科学講座婦人科学産科学
  • 木戸 晶
    京都大学大学院医学研究科放射線医学講座画像診断学・核医学
  • 松村 謙臣
    京都大学大学院医学研究科器官外科学講座婦人科学産科学
  • 小西 郁生
    京都大学大学院医学研究科器官外科学講座婦人科学産科学

書誌事項

タイトル別名
  • A case of cystic adenomatoid tumor resected after nine years of observation and two full-term deliveries
  • 症例報告 MRIで長期間経過を追い2度の妊娠・分娩を経験したcystic adenomatoid tumorの1例
  • ショウレイ ホウコク MRI デ チョウキカン ケイカ オ オイ 2ド ノ ニンシン ・ ブンベン オ ケイケン シタ cystic adenomatoid tumor ノ 1レイ

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抄録

<p>Adenomatoid tumorは子宮に好発する中皮細胞由来の良性腫瘍である.病理学的に4つに分類されるが,そのうちcystic adenomatoid tumorは大きいものが多く,卵巣腫瘍や他の子宮腫瘍との鑑別が問題となる.Cystic adenomatoid tumorが妊娠に合併した報告は1例しかない.今回,子宮摘出術までの9年間,MRIで経過を追跡し,その間に2回の妊娠・分娩を経た1例を報告する.症例は未経産の女性.31歳時に下腹部痛を主訴に他院を受診し子宮腫瘍を指摘され,当院紹介受診となった.MRIで子宮左後壁漿膜下に5 cm大のT2強調画像高信号,T1強調画像低信号を示す多数の嚢胞から構成される腫瘤性病変を認めた.Cystic adenomatoid tumorまたは変性子宮筋腫を疑い,手術加療について検討中,自然妊娠に至った.妊娠中のMRIでは腫瘍径は6.2 cmであった.保存的に経過観察し,妊娠40週に女児を経腟分娩した.分娩から半年後のMRIにて腫瘍は9.6 cm大と増大を認めた.手術加療を勧めたが希望されず,経過観察となった.33歳時に再度妊娠に至り,妊娠40週に男児を経腟分娩した.以後も経過観察していたが39歳時のMRIで腫瘍は10 cm大となった.この時点で患者に子宮温存希望がなく,根治術を希望したため,子宮全摘出術を施行した.手術所見は,男性手拳大の多房性嚢胞性腫瘤が子宮左背側から腹腔内へ外向性に発育し,一部壁が自然破綻して粘稠な内容液が腹腔内に漏出していた.病理組織学検査では,子宮体部筋層に連続して多房性嚢胞性腫瘤を認め,単層の立方~扁平の異型の乏しい上皮様細胞からなる嚢胞が拡張して多房性に増生していた.免疫染色にて腫瘍細胞においてcalretininとpodoplaninが陽性であり,cystic adenomatoid tumorと診断した.本症例のようにcystic adenomatoid tumorが妊孕性温存希望のある若年者に発生した場合には,診断およびフォローアップにMRIの果たす役割は大きいと考えられる.〔産婦の進歩69(2):107-112,2017(平成29年5月)〕</p>

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