切迫早産妊婦の妊娠予後の評価方法に関する研究

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タイトル別名
  • A comparative study of clinical utility of parameters for prognostic evaluation of women with premature labor
  • セッパク ソウザン ニンプ ノ ニンシン ヨゴ ノ ヒョウカ ホウホウ ニ カンスル ケンキュウ

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抄録

早産の原因の1つに絨毛羊膜炎が挙げられるが,子宮頸管から絨毛膜や羊膜の組織に炎症が発生すると,局所で産生された生理活性物質によって子宮収縮や子宮頸管熟化が促され,早産に至ると考えられる.実地臨床では,全身の炎症マーカーや腟から子宮頸管の局所的マーカーが診断のために用いられてはいるが,false positiveやfalse negativeが少なくない.そこで,切迫早産妊婦において腟内の微生物学環境,腟分泌物中の絨毛羊膜炎のマーカー動態と子宮頸管粘液中のIL-8濃度,あるいは妊娠継続との関連性を解析し,早産の早期診断と妊娠の予後判定への応用につき検討した.<br>  妊娠22週から33週の間に切迫早産のため入院加療を要した単胎症例124例を対象にした.加療開始前に検索した腟分泌物微生物培養,腟分泌物中癌胎児フィブロネクチン(fFN)濃度や頸管粘液中IL-8濃度と妊娠の転帰との関係を後方視的に解析した.<br>  全症例の早産予後は,妊娠34週未満の早産28例(22.6%),加療開始後7日未満の分娩(加療不応)18例(14.5%)であった.腟分泌物培養で,lactobacillus以外の微生物が陰性であったのは74例(59.7%),陽性であったのは50例(40.3%)であった.陽性例は陰性例に比べ加療不応率は有意に高かったが,頸管粘液中IL-8濃度には差がなかった.そして,lactobacillusあるいは真菌以外の細菌を腟内に認めると,腟分泌物中fFNが陰性や陽性にかかわらず加療不応率が高くなった.また,腟分泌物中fFN陽性例(47/124=37.9%)では陰性例(77/124=62.1%)に比べ34週未満早産や加療不応の予後不良例の頻度がいずれも有意に高かったが,頸管粘液中IL-8濃度は有意に低値であった.子宮頸管粘液中IL-8値(ng/ml)は1~1873に分布していたが,中央値は87.5であり,51.6%の症例が1~100に属した.また,300未満の例(低値群)は83例(66.9%),300以上の例(高値群)は41例(33.1%)であった.低値群と高値群の間で妊娠34週未満の早産例や加療不応例の頻度に差はなかった.<br>  以上の成績から,切迫早産妊婦における妊娠予後を予測するためには,腟内微生物環境と腟分泌物中fFNとを合わせて検索することが重要で,頸管粘液中IL-8濃度測定の有用性は低いと考えられた.〔産婦の進歩57(1):1-12,2005(平成17年2月)〕<br>

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