妊娠22週で子宮静脈破裂による腹腔内出血の修復術後,正期産で生児を得た1例

  • 大上 健太
    大阪府済生会千里病院産婦人科
  • 中野 朱美
    大阪市立大学大学院医学研究科産科婦人科学
  • 山本 浩子
    大阪市立大学大学院医学研究科産科婦人科学
  • 羽室 明洋
    大阪市立大学大学院医学研究科産科婦人科学
  • 浜崎 新
    大阪市立大学大学院医学研究科産科婦人科学
  • 寺田 裕之
    大阪市立大学大学院医学研究科産科婦人科学
  • 橘 大介
    大阪市立大学大学院医学研究科産科婦人科学
  • 古山 将康
    大阪市立大学大学院医学研究科産科婦人科学

書誌事項

タイトル別名
  • A case of hemoperitoneum caused by spontaneous rupture of a superficial uterine vein at 22 weeks gestation, and obtained a term infant after surgical repair
  • 症例報告 妊娠22週で子宮静脈破裂による腹腔内出血の修復術後,正期産で生児を得た1例
  • ショウレイ ホウコク ニンシン 22シュウ デ シキュウ ジョウミャク ハレツ ニ ヨル フクコウ ナイシュッケツ ノ シュウフク ジュツゴ,セイキサン デ セイジ オ エタ 1レイ

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説明

妊娠中の子宮静脈破裂による腹腔内出血は非常にまれであり,重篤な場合は周産期および新生児死亡率が増加するといわれている.今回われわれは妊娠22週で子宮静脈破裂による腹腔内出血を外科的に修復し,正期産で無事生児を得た1例を経験したので報告する.症例は42歳,初産婦.配偶者間人工授精(以下AIH)にて妊娠成立した.妊娠17週4日,多発筋腫合併妊娠,高年初産婦にて当科紹介初診となった.妊娠22週3日より下痢,嘔吐の消化器症状を認め,さらに妊娠22週5日より右上腹部痛が出現したため急性腹症にて緊急入院となった.内診・超音波検査で明らかな異常所見は確認されず,血液検査では感染徴候および貧血の進行を認めた.MRI所見にて急性虫垂炎破裂後が疑われたため,緊急開腹手術を施行した.開腹所見は消化管に異常所見はなく,右側卵管付着部位の子宮静脈が破裂,持続出血していた.出血部位の子宮筋層の縫合結紮およびフィブリン加第13因子製剤散布して,止血し得た.術中出血量は1155ml,輸血はRCC6単位施行した.術後麻痺性イレウスを発症するも保存的に軽快し,術後26日目に退院した.以後の妊娠経過は良好で,妊娠38週5日子宮収縮の増加を認め再入院した.妊娠39週0日のCTG所見にて遷延性徐脈を認め,同日胎児機能不全の適応にて緊急帝王切開術施行した.児は2785gの男児(Apgar score 1分後7点,5分後9点,臍帯動脈血液ガスpH7.222,BE-3.0)を娩出した.臍帯巻絡が頸部と体幹にあり,これが遷延性徐脈の原因と考えられた.今回の帝王切開術と同時に有茎性の筋腫核出術も施行した.術中前回開腹時の子宮静脈破裂創部に異常は認めなかった.母児とも経過良好にて術後6日目に軽快退院となった.本症例のように,妊娠中期での腹腔内出血のあと妊娠継続している症例は少なく,妊娠後期では常位胎盤早期剥離と診断され緊急帝王切開術を行っている症例がほとんどであった.妊娠継続を要する週数での腹腔内出血は迅速に精査・加療を行うことで,正期産での出産も可能であると考える.〔産婦の進歩66(2) : 143-147,2014(平成26年5月)〕

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