コンピュータ支援外科における最近の進歩

  • 鴻 信義
    東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科学教室

書誌事項

タイトル別名
  • 第114回日本耳鼻咽喉科学会総会シンポジウム コンピュータ支援外科における最近の進歩 : 鼻科領域におけるナビゲーション手術の現状と今後の展望
  • ダイ114カイ ニホン ジビ インコウ カガクカイ ソウカイ シンポジウム コンピュータ シエン ゲカ ニ オケル サイキン ノ シンポ : ビカ リョウイキ ニ オケル ナビゲーション シュジュツ ノ ゲンジョウ ト コンゴ ノ テンボウ
  • ―鼻科領域におけるナビゲーション手術の現状と今後の展望―

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抄録

鼻副鼻腔の構造は複雑で, 個人差や左右差などのバリエーションが多く, また眼窩, 前頭蓋, 視神経などの重要臓器に囲まれているため, 鼻科領域手術では術中に眼窩や頭蓋などを損傷するリスクがある. そこで1990年代から, より安全な手術を目的に内視鏡下鼻内手術 (ESS) にナビゲーションシステムが応用されるようになった. 2008年に下鼻甲介と鼻中隔手術を除くほとんどの鼻科領域手術に対してナビゲーション加算が認められたことも相まって, 現在は本邦でもかなり普及している.<br> ナビゲーションシステムが特に威力を発揮するのは, 1) 慢性副鼻腔炎再手術例や術後性副鼻腔嚢胞など, 副鼻腔形態が既往の手術や病変自体の進行によって変貌しているため, 一般的な副鼻腔解剖の知識のみでは十分な対応ができない症例, 2) 前頭洞病変や上顎洞病変など, 前方斜視鏡下の手術操作が必要な症例, 3) 後部篩骨洞や蝶形骨洞など副鼻腔深部に病変がある症例, 4) 高度病変のため術野からの出血が多い症例, などである.<br> 近年, 頭蓋底病変や眼窩内病変も ESS の適応と考えられている. このような手術ではナビゲーションシステムが欠かせない. 一方, 現行のシステムが表示する画像は, 術前に撮影した CT や MRI 画像に基づいており, 術中に除去された病変部分やその周囲臓器の位置変化 (brain shift,orbital shift) 情報は画像に反映できない. そこで最新の術中画像更新システムでは, 術中に適宜 CT を撮影し, 新たに再構築した画像を用いてナビゲーションを行える. また現在われわれは, 立体内視鏡画像に患者副鼻腔および周辺臓器の3次元グラフィックモデルを重畳表示するステレオナビゲーションシステムを開発・改良し, 術野のオリエンテーションが直感的に認識できるようにした.<br> ナビゲーション手術の今後の課題は, ナビゲーションを用いることが術後成績の向上や手術時副損傷の軽減に寄与しているかどうか評価・検討することである.

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