膵癌治療用ワクチンの現状と未来

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抄録

膵癌は5年生存率が5%と予後不良で, 新規抗癌剤や多剤併用療法の開発が世界中で行われており, 第4の治療法として期待を集めているのが癌免疫療法である. 標的となる腫瘍細胞に特異的に発現している内因性抗原である腫瘍関連抗原はプロテアソームによるプロセシング作用を受けてペプチド断片となる. 主要組織適合抗原 (MHC, ヒトではHLA) Class I分子に結合し, ゴルジ体を介して細胞表面へ表出する. 表出したMHC (HLA) Class I-ペプチド複合体によりペプチドがCD8陽性T細胞に提示され, CD8陽性T細胞を活性化することにより抗原特異的なCTLが誘導される. ぺプチドワクチン療法では腫瘍特異的細胞傷害性Tリンパ球 (Cytotoxic T lymphocytes: CTL) を誘導し得るエピトープペプチドを腫瘍特異的な抗原から同定し, それを癌患者に投与する.<br>癌免疫療法の問題点として癌の免疫逃避機構が挙げられる. すなわち, 癌細胞のheterogeneityによる腫瘍関連抗原およびHLA Class Iの発現低下, 癌の微小環境における免疫抑制因子による抗腫瘍免疫の抑制がある. VEGFR2由来ペプチドワクチンElpamotide (OTS102) とGemcitabineの併用療法の第I相臨床治験にて推奨投与量が決定され, この結果からpivotalに大規模臨床試験 (UMIN000001664, PEGASUS-PC Study) が実施された. 詳細な解析結果が待たれる. さらに, 同カクテルペプチドワクチンを用いたGemcitabine不応膵癌に対する第III相臨床試験も企業治験として実施されており, 今後の結果が期待されるところである.<br>今後は膵癌だけでなく, ほかの癌腫に対しても新規ペプチドワクチンの開発が見込まれる. ペプチドワクチンは安全性が高く, 臨床応用への道が開かれている. 日本発の癌ペプチドワクチンの創薬化のためにも, 産官学の連携は不可欠と考える.

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