熱ストレス蛋白ファミリーの生物学的機能 その臨床における意義

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タイトル別名
  • Stress Proteins: Biological Function and Clinical Significance.
  • ロウネン イガク ノ テンボウ ネツ ストレス タンパク ファミリー ノ セイ
  • その臨床における意義

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抄録

生命は, その誕生以来様々な外部環境の変化に曝されながら, その変化に適応する戦略と戦術を構築してきた. 前者は個を越えた環境適応のための遺伝子変異を伴う多種多様な生命体への進化で代表されるが, 後者は有限の命を有する個のレベルでの応答現象であり通常大きな遺伝子変異は伴うことなく実践されなければならない. 1962年にショウジョウバエの熱ショック負荷時に初めて見いだされた熱ショック蛋白は, その後の研究の進展により原核生物から真核生物に至るまで見いだされるストレス蛋白として, まさに後者の遺伝子レベルでの発現調節によるストレス応答現象を担う中心的存在であることが明らかになった. なかでも画期的なことは, このストレス蛋白にはストレス負荷時のみならず正常状態においても,「分子シャペロン」という言葉で表現される重要な機能を担っていることが明らかとなったことである. シャペロン (chaperone) には介添役の意味があり, 分子シャペロンとは未成熟な合成直後の蛋白が正しく折りたたまれることを介助する機能を表わす用語として Ellis らにより提唱されたものである. すなわち, ストレス蛋白には分子シャペロンとして「蛋白質の揺りかごから墓場まで」を介添する機能があり, このような作用を通じて, 蛋白質に変異をもたらすような様々な細胞内外のストレスにも応答してその機能維持に努めているものと想定されている. 多くの疾病は, 細胞レベルでの異種蛋白や異常蛋白の生成を通じてホメオスターシスの破綻をもたらすものと考えられており, その意味でも臨床病態を細胞レベルで理解するためには, 細胞応答現象を担うストレス蛋白の動態に関する知識が必須となってきている. 本展望では, まず主なストレス蛋白の機能を解説し, 次に臨床との関わりについては, ダイナミックな細胞応答現象が見いだされその役割が注目されている脳虚血病態における研究を中心に紹介する.

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