急性呼吸不全を示し,急性好酸球性肺炎との鑑別を要した高齢者Asthma-COPD overlap syndrome(ACOS)と考えられた1例

  • 鈴木 宏清
    株式会社日立製作所ひたちなか総合病院内科
  • 吉田 和史
    株式会社日立製作所ひたちなか総合病院内科
  • 寺本 信嗣
    筑波大学附属病院ひたちなか社会連携教育研究センター呼吸器内科

書誌事項

タイトル別名
  • A case of acute respiratory failure in an elderly patient with elderly asthma-COPD overlap syndrome (ACOS) is differentiated from acute eosinophilic pneumonia
  • 症例報告 急性呼吸不全を示し,急性好酸球性肺炎との鑑別を要した高齢者Asthma-COPD overlap syndrome (ACOS)と考えられた1 例
  • ショウレイ ホウコク キュウセイ コキュウ フゼン オ シメシ,キュウセイ コウサンキュウセイ ハイエン ト ノ カンベツ オ ヨウシタ コウレイシャ Asthma-COPD overlap syndrome (ACOS)ト カンガエラレタ 1 レイ

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抄録

閉塞性肺疾患(COPD)と気管支喘息は異なった疾患であるが,その合併病態が知られており,喘息及びCOPDの国際ガイドライン委員会が共同でAsthma-COPD overlap syndrome(ACOS)という新しい概念を提唱した.今回我々は,再喫煙を契機に呼吸不全を生じ,急性好酸球性肺炎(AEP)と鑑別を要した高齢者ACOS症例と考えられる症例を経験したので報告する.症例は,77歳,男性.主訴は,呼吸困難.慢性閉塞性肺疾患(COPD)の診断で通院中で,フルチカゾン・サルメテロール配合剤吸入にて,症状は安定していた.一時期,禁煙していたが,救急外来受診1カ月前より再度喫煙を開始していた.201X年○月22日に呼吸困難が生じ外来を受診した.血液ガス分析を含め,明らかな異常を認めず帰院した.その1週間後,呼吸困難が悪化し再度,救急外来を受診した.安静時肺機能検査で一秒量(FEV1)0.76 L(%FEV1 26.1%),動脈血液ガス分析は空気呼吸下でpH 7.42,PaCO2 41.3,PaO2 51.9,HCO3- 25.9であった.胸部CTにて広範な肺気腫性病変と小葉間隔壁の肥厚を認めた.末梢血白血球数の増加(13,200/μL),好酸球比率の著明な上昇(61.5%)を認めた.急性の好酸球性炎症の合併を考慮して,同日より酸素投与下にステロイドパルス療法を実施し,4日目には,自覚症状,ガス交換障害の改善を確認し,酸素投与を中止した.その後,ステロイドの後療法を継続し,画像所見,血液ガス所見も改善した.ステロイドパルス療法施行後7日目に施行した,気管支鏡検査では,気管支粘膜に軽度のリンパ球浸潤を認めるのみであったが,肺胞洗浄液の分析では総細胞数の増加と,4%の好酸球を認めた.胸部CT検査の画像所見では肺気腫性病変が明らかであり,固定性の気流閉塞障害もあり,COPDとして矛盾しないが,再喫煙を契機にした急速な末梢血好酸球上昇と急性呼吸不全状態は,通常のCOPD急性増悪よりは重篤であり,AEPとの鑑別を要した.しかし,病理所見はAEPに一致せず,血管炎を示す所見もなかった.その後は,気管支拡張薬による治療を中心にして治療を継続し,ステロイドの減量を試みたが,減量すると症状が悪化し,末梢血好酸球数も増加した.ステロイドを2週間中止して再度気管支鏡下生検を行ったが,好酸球の組織浸潤はみられなかった.以上より,好酸球性肺炎とは診断できず,喘息様の気道炎症を合併した高齢者ACOS症例と考えられた.ACOSは,喘息患者の高齢化,喫煙喘息患者の高齢化などにより増加することが推定されており,今後は高齢気流閉塞性疾患患者の診断,治療の際に考慮すべき病態と考えられる.

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参考文献 (11)*注記

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