「サプリメント」による抗老化療法の現状と展望

  • 大澤 俊彦
    名古屋大学大学院生命農学研究科食品機能化学研究室

書誌事項

タイトル別名
  • Recent development and future direction of anti-aging therapy by supplements
  • サプリメント ニ ヨル コウロウカ リョウホウ ノ ゲンジョウ ト テンボウ

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最近, サプリメントが大きな注目を集めている. また, 世界に先駆けて日本でスタートした「機能性食品」に関する研究の進展の結果,「特定保健用食品」(トクホ)と「栄養機能食品」を併せた「保健機能食品」として厚生労働省により認可され, 現在に至っている. しかし, サプリメントを含めた食品の流通に伴い, 規格基準化と表示の国際的な統一が求められてきている. このような背景で, 特に重要視されているのが, 科学的根拠に基づいた (Evidence-based) サプリメントである. 一方, 老化のメカニズムのなかで, 酸化ストレスの役割は大きい. ヒトをはじめとする好気性生物は,「酸化ストレス」を避けるために「抗酸化防御機構」や「酸化傷害修復系」を備えているが, これらの防御系で完全に防ぎきれるものでなく, 酸化傷害の加齢に伴う蓄積が老化の原因であると考えられている. われわれは, 免疫化学的な検出法の確立に着目して, 過酸化脂質やタンパク質, DNAの酸化傷害に特異的なモノクローナル抗体の作製に成功し, 現在,これらの抗体を用いて「酸化ストレス」の程度を, 簡便かつ微量で定量できる「抗体チップ」の開発を行い, 培養細胞から個体レベル, ヒトを対象とした臨床レベルで適用することで, アンチエイジングの評価系の確立を目的に研究を進めている. このような背景で, われわれは,「ポリフェノール」による「酸化ストレス制御」に焦点をあてて研究を進めてきた. なかでも, ハーブや香辛料, 特に, インド料理に不可欠な香辛料, ターメリックの黄色色素,「クルクミン」に焦点をあてて研究を進めてきた. その結果, クルクミンを摂取するとまず腸上皮細胞で還元され, 強力な抗酸化性を持つテトラヒドロクルクミンに変換されたのちに脂質ラジカルを捕捉することで, 老化制御に重要な役割を果たすことを明らかにした. そこで, 老化予防作用について世界的な注目を集めているぶどう種子中に多く存在する「リスベラトロール」の最近の研究動向も併せて, 抗酸化ポリフェノール類の持つ酸化ストレス制御機構と老化予防機能についての最新の話題を紹介してみたい.

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参考文献 (17)*注記

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