高齢者の不整脈とその管理

書誌事項

タイトル別名
  • Arrhythmias in the elderly population and their management
  • コウレイシャ ノ フセイミャク ト ソノ カンリ

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説明

高齢化社会において加齢とともに各種疾患の罹患率は増加し, 不整脈の出現も例外ではない. 不整脈の発生には解剖学的要因と機能的要因が係わっており, 加齢に伴う生理的変化として冠動脈狭窄や心房拡張, 心筋間質線維化, アミロイド沈着, 刺激伝導系の変化, 弁輪拡大や石灰化を認め, 病的変化として高血圧や心筋肥大, 閉塞性肺疾患などが関与する. また高齢者では代謝・排泄機能が低下しているため抗不整脈薬やその他の薬剤により催不整脈作用を来たしやすい. 高齢者の不整脈の頻度は, 国内外とも上室性不整脈が最も多く心室期外収縮, 心房細動がこれに続き, 徐脈性不整脈は頻度が低い. 上室性不整脈は加齢とともに頻度は増加し, 心室性不整脈と徐脈性不整脈は女性より男性で頻度が高い. 脚ブロックの頻度は低いものの60歳頃から急激に増加する. 高齢者の不整脈のうち臨床上重要な心房細動も65歳頃から指数関数的に増加し, 欧米の調査では80歳代で罹患率は約10%である. 心房細動は甲状腺機能亢進症や高血圧症などの基礎疾患が関与することが多く, また心不全や心原性脳血栓塞栓症をきたすことも多く, 心房細動罹患高齢者では予後を左右する. 心室期外収縮は Holter 心電図で69~97%と高頻度に認められ加齢とともに増加するが, 基礎疾患を有しない場合は生命予後に影響しない. 洞不全症候群や房室ブロックは大半で刺激伝導系の変性が関与するが, 明らかな基礎疾患によることは少ない. 不整脈治療の目標は自覚症状の軽減, ポンプ機能の改善, 生命予後の改善であり非高齢者の場合と変わらないが, 心房細動による心原性塞栓症の予防は重要である. 抗不整脈薬を使用する場合は, 生理的代謝機能の低下に伴う薬剤の副作用 (催不整脈作用) や前立腺肥大などの高齢者特有の疾患に対し注意が必要である. 心原性塞栓症の予防としてはワルファリンによる抗凝固療法が優れており, 高齢者でこそその使用が勧められるが投与の実態は充分とはいえない.

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