ウレアーゼ産生菌の尿路感染から高アンモニア血症を来した1例―薬剤性の尿閉が一因となり,意識障害を来したパーキンソン病症例

  • 安西 将大
    岐阜市民病院神経内科 岐阜大学大学院医学系研究科神経内科・老年学分野
  • 香村 彰宏
    岐阜市民病院神経内科
  • 林 祐一
    岐阜大学大学院医学系研究科神経内科・老年学分野
  • 西田 承平
    岐阜大学医学部附属病院薬剤部
  • 犬塚 貴
    岐阜市民病院神経内科 岐阜大学大学院医学系研究科神経内科・老年学分野

書誌事項

タイトル別名
  • A case of hyperammonemia resulting from urinary tract infection caused by urease-producing bacteria in a Parkinson's disease patient with drug-induced urinary retention
  • 症例報告 ウレアーゼ産生菌の尿路感染から高アンモニア血症を来した1例 : 薬剤性の尿閉が一因となり,意識障害を来したパーキンソン病症例
  • ショウレイ ホウコク ウレアーゼ サンセイキン ノ ニョウロ カンセン カラ コウアンモニア ケッショウ オ キタシタ 1レイ : ヤクザイセイ ノ ニョウヘイ ガ イチイン ト ナリ,イシキ ショウガイ オ キタシタ パーキンソン ビョウショウレイ

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抄録

<p>症例は71歳女性.9年前よりパーキンソン病と診断され,内服治療を開始された.筋強剛や歩行障害は徐々に進行していたが,自力歩行が可能であった.以前からパーキンソン病に伴う過活動膀胱に対し,コハク酸ソリフェナシン5 mgが処方されていたが,入院1週間前からミラベグロン50 mgが追加された.入院日前日朝は意識清明であったが,夕方家族が帰宅すると反応が鈍く,翌日になっても改善を認めないため近医を受診した.脱水症が疑われ,点滴を実施されたが,さらに疎通性の悪化,傾眠,自力での体動が困難となったため,当院へ救急搬送された.身体所見では腹部異常があり,臍部から下腹部の膨隆と圧迫時の逃避反応を認めた.神経学的にはJCS 200の意識障害,両下肢腱反射亢進,四肢の筋強剛を認めた.安静時振戦や羽ばたき振戦は認めなかった.頭部CTでは明らかな異常はなかった.血中NH3値が209 μg/dLと高値を認め,腹部骨盤部CTでは著明な膀胱の拡大,尿貯留を認めた.導尿より沈殿物を伴う1,200 mlの血膿尿がみられ,膀胱カテーテル留置,抗生剤加療を行ったところ,血中NH3値は5時間後に38 μg/dLへと低下し,来院から10時間で意識レベルの速やかな改善を認めた.後日,尿培養検査からはウレアーゼ陽性のCorynebacterium urealyticumが検出された.経過から,ウレアーゼ産生菌による尿路感染症による高アンモニア血症と診断した.本症例では,パーキンソン病および過活動膀胱に対する薬剤追加をきっかけに尿閉になり,点滴による利尿が膀胱内圧の上昇に加担した.ウレアーゼ産生菌により産生されたNH3が上述の膀胱内圧の亢進により膀胱静脈叢へ流入し,肝代謝を受けることなくNH3が直接大循環に移行することで,高アンモニア血症を惹起したと考えた.パーキンソン病などの神経疾患では神経因性膀胱を合併しやすい.頻尿・過活動膀胱治療薬を内服する高齢患者では本症を呈する可能性があり,重要な症例と考え報告する.</p>

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