高齢者の精神健康における顔の運動効果について

  • 岡本 るみ子
    筑波大学大学院人間総合科学研究科ヒューマン・ケア科学専攻
  • 水上 勝義
    筑波大学大学院人間総合科学研究科ヒューマン・ケア科学専攻

書誌事項

タイトル別名
  • The effective of facial exercises on the mental health in elderly adults
  • コウレイシャ ノ セイシン ケンコウ ニ オケル カオ ノ ウンドウ コウカ ニ ツイテ

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抄録

<p>目的:我が国の高齢化が諸外国に比べ類を見ないスピードで進む中,予防・対策の一策として運動が注目されている.身体運動プログラムは高齢者の精神健康や認知機能に有効との報告があるが,現在,地域包括支援センターを中心に展開されている身体運動プログラムは脱落率の高さや,四肢機能低下により実施困難者が存在することなどの課題も指摘される.こうした中,本研究では顔の運動に注目した.先行研究からも顔の運動が精神健康や気分に肯定的な影響を及ぼすことが期待される.方法:東京都K区在住で,同意を得られた65歳~87歳までの認知機能が正常の75名(男性:3名,女性:72名)を介入群と非介入群とに無作為に割り付け,介入群に対し,1回30分,週2回,12週間(合計24回)の顔の運動(フェイスエクササイズ)を実施した.運動強度は2.5~3METs程度である.介入は2016年4月~6月の3カ月間実施した.測定項目は,GHQ-12による精神健康度,改訂PGCモラールスケールによる主観的幸福感,表情解析,舌圧などである.非介入群に対しては,ほぼ同じ時期に測定を実施した.介入前後の変化,両群間の効果の比較について統計的に分析した.結果:対象者のうち介入群は8割以上,顔の運動教室のみに参加した25名(脱落率32%,継続実施率68%),非介入群は介入前後の測定のみに参加した28名を解析対象とした.介入群のGHQは介入後に有意に低下し,介入により精神健康度が改善したことが示された.改訂PGCモラールスケールによる主観的健康感に変化は見られなかったが,精神健康度と主観的健康感の変化は有意に関連した.また,表情や舌圧も有意な改善を示した.さらに,多くの参加者から肯定的な評価が寄せられた.結論:顔の運動により,介入群の高齢者の精神健康や気分,舌圧,表情に対する改善効果を認めた.本研究の結果は,本介入プログラムが介護予防プログラムの一つとして活用可能であること,特に四肢筋力低下など全身運動が困難な高齢者にとって有用なプログラムであることを示唆している.</p>

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