患者由来iPS細胞を用いた遺伝子治療研究

  • 大津 真
    東京大学医科学研究所・幹細胞治療研究センター 幹細胞プロセシング分野/ステムセルバンク

書誌事項

タイトル別名
  • Patient-derived iPS cells as a tool for gene therapy research
  • カンジャ ユライ iPS サイボウ オ モチイタ イデンシ チリョウ ケンキュウ

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抄録

近年,造血幹細胞を標的とする遺伝子治療の成功例の報告が増えている。標的はいずれも重篤な単一遺伝子病であり,患者は造血/免疫細胞に原因遺伝子の正常な発現を欠くことで発症する。遺伝子治療は,これを造血幹細胞に正常遺伝子の発現を補完することで治癒せしめることを目的として行われる治療法である。しかしながら実施例の増加とともに,標的疾患ごとの有効性,安全性の面での違いが明らかとなっており,遺伝子導入法を含めた治療プロトコールのさらなる至適化が必要とされている。人工多能性幹細胞(iPS細胞)は,単一遺伝病を細胞レベルで再現するツールとして有用であることから,これらの遺伝子治療における至適化研究に適している。今後,疾患特異的iPS細胞の研究ツールとしての活用が一般化し,他の実験的アプローチと協働することで,遺伝病に対する遺伝子治療のさらなる改良につながることが期待される。

収録刊行物

  • 臨床血液

    臨床血液 56 (8), 1016-1024, 2015

    一般社団法人 日本血液学会

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