高齢者におけるインフルエンザについての研究: 1992年度院内流行の解析

  • 鍋島 篤子
    九州大学医学部総合診療部 医療法人原土井病院臨床研究部
  • 池松 秀之
    九州大学医学部総合診療部 医療法人原土井病院臨床研究部
  • 山家 滋
    医療法人原土井病院臨床研究部
  • 林 純
    九州大学医学部総合診療部
  • 原 寛
    医療法人原土井病院臨床研究部
  • 柏木 征三郎
    九州大学医学部総合診療部

書誌事項

タイトル別名
  • An Outbreak of Influenza A (H3N2) among Hospitalized Geriatric Patients
  • コウレイシャ ニ オケル インフルエンザ ニ ツイテ ノ ケンキュウ 1992

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抄録

高齢者はインフルエンザのハイリスクグループと考えられ, 欧米ではワクチン接種が推奨されている. しかし, 本邦での高齢者におけるインフルエンザの流行についての報告は少ない. 今回, 1992年1月から3月にかけて, 高齢入院患者が90%を占める, 福岡市内の病院の2つの病棟でのインフルエンザの流行を経験した. A病棟の96名及びB病棟の118名計214名の入院患者について, 37.5℃以上の発熱の多発が1月29日から2月10日までと, 2月25日から3月5日までに見られた. これらの発熱症例で, 発熱初日および2週目以降のペア血清が得られた65名中39例 (60.0%) でインフルエンザウイルスA (H3N2) に対する抗体価の4倍以上の上昇が認められた. さらに, 7例の咽頭ぬぐい液からインフルエンザウイルスA (H3N2) が分離され, その流行が確認された. インフルエンザ例39例の最高体温は, 39℃ 以上の者が18名 (46.2%) で, 同時期の非インフルエンザ例の最高体温より有意に高かった. インフルエンザ例39例において, 発熱期間は8日以上のものが12名, 1日のみのものは6名であり, 非インフルエンザ例の発熱期間より有意に長かった. 肺炎の合併は, 10名 (25.6%) に認められ, すべて70歳以上であった. 死亡例は2例で, いずれも80歳以上であった. 以上1992年1月から3月の流行期において, インフルエンザは高齢者においても高い発熱を来し, 他の要因による発熱より発熱期間は長いと考えられた. また, 高い肺炎合併率を有し, 死亡の要因となる可能性があり, 特に70歳以上の高齢者において重要な疾患であると考えられた.

収録刊行物

  • 感染症学雑誌

    感染症学雑誌 70 (8), 801-807, 1996

    一般社団法人 日本感染症学会

被引用文献 (11)*注記

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参考文献 (13)*注記

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