書誌事項
- タイトル別名
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- Studies on the Giardiasis as the Zoonosis
- Studies on the giardiasis as the zoonosis. III Prevalence of Giardia among the dogs and the owners in Japan
- III. Prevalence of<I>Giardia</I> among the Dogs and the Owners in Japan
- III. 本邦におけるイヌおよび飼育者のジアルジア保有状況
説明
Zoonosis (人畜共通感染症) としてのジアルジア症の感染経路に関する基礎資料の一つとするため, 全国的規模で本邦のイヌ2,218頭について糞便検査を行い, ジアルジアのシストの検出を行った. その結果, 検出率は2,218頭中239頭10.8%であり, 239頭のうちの51頭の飼育者57人についても検便を行ったが, 全例陰性であった.<BR>施設別でのシスト検出率は, ブリーダー366頭中68頭 (18.6%), 個人飼育1,811頭中169頭 (9.3%), 試験研究施設41頭中2頭 (4.9%) であり, ブリーダーが他の2施設より有意に高率 (p<0.001) であった. 地区別では, 17の都道府県のうち神奈川, 静岡が他地区より有意に高い陽性率 (p<0.001, p<0.05) を示した. とくに静岡では個人飼育がブリーダーより有意に高率 (p<0.05) であり, 神奈川では個人飼育, ブリーダーともに全国平均より有意に高率 (p<0.001) であった. 年齢別では, 3歳以下のイヌで1,276頭中221頭 (17.3%) であり, 今回の調査でシストの検出されたイヌ239頭の92.5%をしめたことより, 3歳以下のイヌには注意が必要と思われた.<BR>以上より, イヌがヒトのジアルジア症の感染源となる可能性は高くないと思われた. しかし, 近年渡航歴の無い感染源の不明なヒトの症例のあること, 現在ジァルジァの宿主特異性が明確ではないことから, ジアルジア症のZoonosisとしての可能性は否定できず, 今後も注目する必要があると思われた. また, 公衆衛生上からも, 獣医師, 医師等からブリーダー, 一般飼育者に対し検便, 飼育等の衛生指導が必要と思われた.
収録刊行物
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- 感染症学雑誌
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感染症学雑誌 66 (8), 1062-1066, 1992
一般社団法人 日本感染症学会