東京都心部住民における日本脳炎ウイルス中和抗体保有状況

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タイトル別名
  • Serological Study of Neutralizing (NT) Antibody Against Japanese Encephalitis Virus in Non-Affected District of Tokyo
  • トウキョウ トシンブ ジュウミン ニ オケル ニホンノウエン ウイルス チュウ

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抄録

東京都心部住民を対象として, 日本脳炎ウイルスに対する中和抗体価を中山予研株を用いて測定し以下の結果を得た. 日本脳炎ワクチン未接種児では1歳未満: 17/62 (27%), 1歳: 17/87 (20%), 2歳: 10/97 (10%) と抗体保有率は低下するが, その後3歳: 17/72 (24%), 4歳: 7/22 (32%), 5歳: 6/13 (46%) と上昇を認めた. ワクチン接種者を含めて, 8~10歳で23/30 (75%) と抗体保有率はさらに増加し, 10歳代: 25/32 (78%), 20歳代では27/31 (87%) と最高値を示した後, 50歳代では19/31 (61%) まで徐々に下降した. 平均抗体価も8~10歳未満: 102.38, 10歳代: 102.32をピークに50歳代の101.28まで低下した. 抗体保有率と平均抗体価はともに, その後再び上昇し70歳代で31/36 (86%), 101.77の値を示した. 全体の抗体保有率は315/675 (47%), 平均抗体価は101.16であった.<BR>一部の抗体陽性血清について, JaGAr 01, 北京, 熊本, 中山予研株の4株に対する中和抗体価を比較すると, ワクチン未接種児では中山予研株に対する抗体価が高く, 熊本株に対する抗体価は低値を示した. 一方ワクチン接種歴を有する小児では, 4株に対する抗体価に大きな差は認められなかった. ワクチン未接種児107例について中山予研株と北京株に対する抗体価を比較すると, 大多数の血清で中山予研株に対する抗体価が高値を示した.<BR>以上の事実より, 都心部においても程度の差はあるものの依然として日本脳炎ウイルスの浸淫は存在すると考えられ, その抗原性は中山予研株に近いと思われる. 又, 今後の日本脳炎の動向には, より一層の注意が必要と思われる.

収録刊行物

  • 感染症学雑誌

    感染症学雑誌 61 (7), 802-809, 1987

    一般社団法人 日本感染症学会

被引用文献 (1)*注記

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