小児ブドウ球菌感染症の臨床的研究

書誌事項

タイトル別名
  • Clinical Studies on Pediatric Staphylococcal Infections
  • 小児ブドウ球菌感染症の臨床的研究-2-最近5年間に経験したブドウ球菌感染症の5剖検例
  • ショウニ ブドウキュウキン カンセンショウ ノ リンショウテキ ケンキュウ 2
  • Clinical Experience with Five Autopsied Cases of Staphylococcal Infection Over the Last Five Years Report 2
  • 第2報最近5年間に経験したブドウ球菌感染症の5剖検例

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抄録

ブドウ球菌感染症の重篤化の要因を知るため, 最近5年間で経験した5剖検例の臨床的病理学的検討を行った.その結果3例は, 乳児一過性低ガンマグロブリン血症, インスリン依存性糖尿病, 先天性心疾患などを認めるCompromized hostであった.臨床経過は急激で全例に血小板減少と低蛋白血症を認めた.そこで15年間に経験した重症ブドウ球菌感染症56例について血清総蛋白濃度を検討した.<BR>56例中30例に低蛋白血症を認めた.5g/dl以下の著明な低蛋白血症をきたした14例の予後および臨床的特徴は5例が死亡, 4例は広範な蜂巣織炎, 8例は強度の腹部膨満を認め特に重篤であった.一方正常例は26例で死亡例はなかった.敗血症, 肺炎, 膿胸, 髄膜炎などはブドウ球菌感染の中でも重症であるが, その中でも著明な低蛋白血症をきたす病態は重篤であるので, 迅速でかつ強力な抗生物質療法と補助療法の展開が必要である.<BR>重篤化や難治化の要因にブドウ球菌の高度多剤耐性があるが, 抗生物質感受性を検索しえた4例ではセフェム剤, アミノグリコシド系薬剤に (卅) とかなり感受性が高かった.<BR>また1例はブドウ球菌の産生する外毒素により多臓器障害を発症し死亡した.<BR>5剖検例の病理.学的検討では4例は経気管支性の小葉性肺炎像を, 1例は敗血症によるpneumonitisの像を認めた.5例全例に非化膿性のフィブリン血栓が肺, 腎, 脾などに認められ, DICを併発したと考えられた.<BR>著者らの経験した5剖検例では, ブドウ球菌の産生する外毒素とDICの発症が重篤化の要因と推察された.今後はDICを発症するブドウ球菌株の検索が必要と思われる.

収録刊行物

  • 感染症学雑誌

    感染症学雑誌 60 (12), 1303-1310, 1986

    一般社団法人 日本感染症学会

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