日本製狂犬病ワクチン皮内接種法による曝露前免疫の有効性の検討

  • 塩田 星児
    大分大学医学部微生物学講座 大分大学医学部総合診療部
  • AHMED Kamruddin
    大分大学総合科学研究支援センター
  • 三舟 求眞人
    大分大学医学部微生物学講座
  • 西園 晃
    大分大学医学部微生物学講座 大分大学総合科学研究支援センター

書誌事項

タイトル別名
  • Efficacy of Intradermal Regimen Using Japanese Rabies Vaccine for Pre-exposure Prophylaxis
  • ニホンセイ キョウケンビョウ ワクチン ヒ ナイセッシュホウ ニ ヨル バクロ ゼン メンエキ ノ ユウコウセイ ノ ケントウ

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説明

狂犬病に対する曝露前免疫法としてWHO では,組織培養型不活化狂犬病ワクチン1 回量(2.5IU 以上の力価を有するもの)の筋肉内接種,あるいは0.1mL の皮内接種で0,7,28 日に行うことを推奨しているが,わが国では1 回量1.0mL を皮下接種にて0,28,180 日で行う方法のみが能書上記載されている.この接種法では3 回接種終了まで半年もの期間を要するばかりでなく,供給が充分とはいえないわが国の狂犬病ワクチンの現状に対応するのは困難である.このため短期間に終了し,より少ない量のワクチンの接種で充分な感染防御免疫を賦与できるかを検討することは,今後の日本における狂犬病ワクチンの接種法を世界標準に近づけるためにも有用な知見を提供すると考えられる. 今回,同意を得た健常人ボランティア50 名を対象に,日本製組織培養不活化狂犬病ワクチン0.1mL を0,7,28 日のスケジュ―ルで両上腕に皮内接種し,その後0,14,28,42,56,84,208 日目に得られた血清中の狂犬病ウイルスに対する中和抗体価を,迅速蛍光フォーカス抑制試験より測定した.その結果3 回接種後42 日目には50 名全員で中和抗体価は,感染防御に充分な0.5IU/mL 以上(幾何平均3.21IU/mL)の上昇が確認できた.0.5IU/mL 以上の中和抗体価はほぼ全員で84 日目に至るまで持続的に維持された.使用したワクチンのロットの違いにより,中和抗体価の上昇には若干の差があったが,いずれも接種後42 日目での中和抗体獲得率は100%であった.副作用は数名に色素沈着などを認めたが,いずれも軽微なものであった. WHO の推奨する曝露前皮内接種法は日本製狂犬病ワクチンにおいても有効であることが確認され,より少ない量でかつ短期間に感染防御免疫を賦与しうる,有効性,安全性ともに優れた方法であると考えられた.

収録刊行物

  • 感染症学雑誌

    感染症学雑誌 84 (1), 9-13, 2010

    一般社団法人 日本感染症学会

参考文献 (22)*注記

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