ウイルス分離を指標としたHIV感染者の薬剤治療効果の判定

書誌事項

タイトル別名
  • Evaluation of Antiretroviral Chemotherapy Based on the Profile of Virus Isolation from HIV-1 Infected Individuals
  • ウイルス ブンリ オ シヒョウ ト シタ HIV カンセンシャ ノ ヤクザイ チリョウ コウカ ノ ハンテイ

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説明

1988年より11年間, HIV感染者を対象に, 体内のウイルスの生物学的性状の変化を指標とした予後判定検査法の確立を試みてきた. その結果, 感染者体内のHIV-1は, 病態の進行に伴い, 1) 分離率が高まり, 2) in vitroでの増殖速度が増し, 3) T細胞株 (MT-4) に感染性を示して巨細胞形成能を有すSIタイプへと変化することが示された. このような3点のHIV-1フェノタイプを指標としたHIVの「分離指標」は, 感染者の病態をよく反映して, 非常に有用なエイズ発症マーカーであることが確認された. その後, 1997年頃よりわが国においてHAARTの導入が始まったことを契機に, 長期観察中の感染者を1997年を境に前後2期に区分して, 分離指標による測定値の変動を調べたところ, 1997年以降においてウイルス分離率の明らかな低下とSIタイプウイルス出現率の著しい減少傾向が観察された. また, 同じCD4+細胞数の値をもとにした病態ステージにおいて分離指標の改善が著しく, HAARTによる影響がCD4+細胞数よりむしろ分離指標に強く反映していることも示された. 以上の結果から, ウイルス分離を指標とした臨床検査成績は, エイズ発症の予知のみならず, HAARTの効果判定においても役立ち, 特にCD4+細胞数や血中ウイルス量が相関を示さない例においては, その効果判定に有効に活用でき得ることが示唆された.

収録刊行物

  • 感染症学雑誌

    感染症学雑誌 74 (8), 638-645, 2000

    一般社団法人 日本感染症学会

参考文献 (19)*注記

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