本邦の HIV 感染者における慢性腎臓病の有病率

書誌事項

タイトル別名
  • Prevalence of Chronic Kidney Disease Among HIV-infected Individuals in Japan
  • 本邦のHIV感染者における慢性腎臓病の有病率 : 2施設での調査結果
  • ホンポウ ノ HIV カンセンシャ ニ オケル マンセイ ジンゾウビョウ ノ ユウビョウリツ : 2 シセツ デ ノ チョウサ ケッカ
  • ―A Report From Two Tertiary Hospitals―
  • ―2 施設での調査結果―

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抄録

背景:抗 HIV 療法によって Human immunodeficiency virus (HIV) 感染者の生命予後は改善したが,それに伴い慢性腎臓病 (chronic kidney disease:CKD) の有病率が増加している.欧米諸国と異なり,本邦では HIV 感染者の CKD に関する臨床研究は少なく,その有病率や関連因子については不明な点が多い. 対象・方法:2011 年に東京都立駒込病院および東京医科大学病院を定期受診した HIV 感染者 1,482 例 (男性 1,384 例,女性 98 例;平均年齢 44.2 ± 11.4 歳)を対象とした.血清クレアチニン濃度から糸球体濾過値を計算し,尿試験紙法による蛋白尿を測定し,CKD ステージ分類を行った.高血圧と糖尿病の合併率,および腎毒性を有する抗 HIV 薬である tenofovir disoproxil fumarate (TDF) の使用率を調査した.CKD 発症の関連因子を,多変量ロジスティック解析を用いて解析した. 結果:対象者の CD4 陽性リンパ球数は 487 ± 216/μL で,80.5% が HIV-RNA 検出限界以下であった.抗 HIV 薬は 90.2% で使用されており,そのうち TDF の使用率は 61.5% であった.CKD 全ステージの有病率は 12.9% で,蛋白尿陽性は 8.2%であった.全 CKD ステージ,CKD ステージ 3 以上,蛋白尿の有病率は,いずれも東京都立駒込病院で約 3 倍高値であった (p<.0001).平均年齢,高血圧,糖尿病合併率は,東京都立駒込病院で 47 歳,32.9%,5.7%,東京医科大学病院で 40 歳,10.0%,3.5% と前者が有意に高かった.多変量ロジスティック解析では,年齢,高血圧や糖尿病の有無が CKD 発症と有意に関連していた. 結論:両施設におけるHIV 感染者の CKD 有病率は 12.9% であったが,施設間で大きな差が見られた.年齢分布や糖尿病,高血圧合併率の違いが関連している可能性が推察された.

収録刊行物

  • 感染症学雑誌

    感染症学雑誌 87 (1), 14-21, 2013

    一般社団法人 日本感染症学会

参考文献 (83)*注記

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