成人 Wilms 腫瘍の1例および組織型と予後との関連についての文献的検討

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  • A CASE OF ADULT WILMS' TUMOR
  • Review of the Literature on Histopathological Features and Prognosis

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抄録

57歳女性の成人 Wilms 腫瘍の1例を報告した. 患者は右側腹部腫瘤を主訴に当科受診. CTにて右腎下極に内部不均一な腫瘍を認めた. 右腎腫瘍と診断し, 右腎動脈塞栓術施行後の1988年3月20日経腹的右腎摘除術を施行した. 組織型は Wilms 腫瘍, 病期2であった. 術後2年10ヵ月経過した現在まで再発を認めていない.<br>成人 Wilms 腫瘍はまれであり, その予後は一般的には不良とされている. 一方小児 Wilms 腫瘍は近年組織型と予後との関連が検討され, 細胞分化度により favorable histology と unfavorable histology の2つの組織型グループに分類される傾向にある. 我々は過去の成人報告例を集計し組織型と予後との関連について検討した. その結果, unfavorable histology に相当する10症例の2年生存率は22%であり, その予後は極めて不良であった. 一方, favorable histology に相当する24症例の2年生存率は71%であった. 特に上皮型 (epithelial predominant type) で favorable histology を示す症例は病期4の症例を含めて全例が, 2年以上生存していた. 自験例も favorable histology の上皮型であり, 予後良好である理由の1つであると考えられた.<br>以上より, 成人 Wilms 腫瘍は, unfavorable histology を示す症例の予後は極めて不良であるが, favorable histology を示す症例のうちで病期の進んでいない症例と上皮型の予後は小児例と同様に比較的良好であると考えられた.

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