サイコシン:脳が作る「毒」

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タイトル別名
  • Psychosine: A "Toxin" Produced in the Brain
  • ―その作用機序―
  • ―Its Mechanism of Action―

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説明

サイコシン(ガラクトシルスフィンゴシン)は, UDP-ガラクトースとスフィンゴシンより合成され, ガラクトシルセラミダーゼにより分解される. 先天的(遺伝的)分解酵素欠損症(Krabbe病)では, ヒト, イヌ, マウスいずれにおいても, 脳内にサイコシンの蓄積が起こる. サイコシンはミトコンドリアのシトクロームCオキシダーゼ(COX)活性に対し強力な抑制効果をもつ. 精製酵素に対しては活性阻害を示さないが, 超音波処理したレシチンと"再構築"したCOXには明らかな活性抑制作用をもつことから, ミトコンドリア内膜環境変化を介した酵素活性阻害が考えられる. さらに, サイコシン類似物質の効果との比較から, サイコシン分子中のスフィンゴシン部分, 特にそのアミノ基がサイコシンの作用発現に重要と考えられる. サイコシンのCOX活性抑制は強力かつ効果発現が迅速である一方, 完全に可逆性である. 低酸素症に弱い哺乳類の脳内で強力な細胞呼吸抑制能力をもち得る物質が生成されていることは注目すべきことのように思われる.

収録刊行物

  • Journal of UOEH

    Journal of UOEH 11 (4), 487-493, 1989

    学校法人 産業医科大学

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