戦前・戦時期における豊田業団の形成 : 財閥,新興コンツェルン論を念頭に

  • 牧 幸輝
    名古屋市立大学大学院経済学研究科

書誌事項

タイトル別名
  • Development of the Toyota Industrial Group in prewar and wartime Japan : a comparison with Zaibatsu and "New Konzern"
  • センゼン ・ センジキ ニ オケル トヨタギョウダン ノ ケイセイ : ザイバツ,シンコウ コンツェルンロン オ ネントウ ニ

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抄録

本稿の課題は,豊田紡織を起点とする豊田業団の形成過程を明らかにし,トヨタグループ史に新たな史実と視角を提起するとともに,1930年代以降における大企業グループの発展と変容の過程にこれを位置付けることである。戦前,繊維工業を主体としていた豊田家の事業は,その高収益を基盤として重化学工業へ進出した。自動車事業進出にあたっては,並行して航空機や化学事業などへの多角化も進め,さらに中国事業を拡大してリスク分散を図っていた。戦時期には,繊維関連事業を縮小させながら,自動車,兵器,航空機事業へ重点を移し,製鋼事業や工作機械事業は,自動車向けよりもむしろ軍需生産によって経営基盤を確立した。紡織事業は,企業整備によって中央紡績に集約され,最終的に豊田業団の重工業化は,この中央紡績とトヨタ自動車工業の合併によって完遂されたのであった。こうして成立した豊田業団は,形成時期,事業内容,同族支配に関して,既存の財閥,新興コンツェルンとは異なる特徴を有していた。豊田業団は,財閥とも新興コンツェルンとも異なる第三の企業グループと位置付けることが出来る。

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