戦前期台湾・関東州製塩業における日系資本の進出過程 : 野崎家と大日本塩業株式会社を中心に

  • 前田 廉孝
    慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程:日本学術振興会

書誌事項

タイトル別名
  • Japanese salt manufacturers' business expansion into Taiwan and the Kwantung Leased Territory in the prewar period
  • センゼンキ タイワン ・ カントウシュウ セイエンギョウ ニ オケル ニッケイ シホン ノ シンシュツ カテイ : ノザキカ ト ダイニホンエンギョウ カブシキ ガイシャ オ チュウシン ニ

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説明

本稿の課題は,第1次大戦期までにおける日系製塩資本の台湾と関東州への進出過程を検討し,それら勢力圏下製塩業が内地への原料供給地としての役割を果たすに至った過程を明らかにすることである。これを受けて本稿では,野崎武吉郎家と大日本塩業株式会社を事例に,(財)竜王会館所蔵野崎家文書と日塩(株)所蔵史料を主に用いて考察を進めた。本稿の考察より,第1次大戦期まで食塩供給地としての政策的位置づけを得ていなかった勢力圏下製塩業への日系資本の進出とその後の事業は,塩専売制度導入を画期とする内地食塩市場の構造的変化に呼応して展開されたことが明らかになった。さらに,第1次大戦期における内地の食塩需要の急激な拡大に起因した塩専売政策の転換により,台湾・関東州製塩業は内地への原料供給地として勢力圏下の分業構造に組み込まれたのであった。一方で,第1次大戦後には原料塩獲得を目的とした勢力圏下製塩業への食塩需要者による直接進出が活発化した。このことから,国家にとっての原料資源の重要性が増大した第1次大戦期を画期として,日系製塩資本の進出動機は大きく変化した可能性が示唆された。

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