大分県における間接雇用の展開と金融危機に伴う雇用調整の顛末

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タイトル別名
  • The Rise and Fall of Mediated Employment in Export-oriented Localities : Employment Adjustment and Municipal Governments' Countermeasures against Job Loss under the Financial Crisis in Oita Prefecture, Japan
  • オオイタケン ニ オケル カンセツ コヨウ ノ テンカイ ト キンユウ キキ ニ トモナウ コヨウ チョウセイ ノ テンマツ

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抄録

本稿は,間接雇用労働者の増加が地域に与えた影響と金融危機に伴って実施された雇用調整の顛末について,いわゆる「派遣切り」の発生によって全国的な注目を集めた大分県を対象地域として分析することを目的とする.分析に際しては,企業の追求するフレキシビリティの代償を労働者にリスクとして転嫁する制度として,間接雇用が現代の労働市場に組み込まれている点に注目する.複数の大手製造業の事業所が立地する大分県杵築市と国東市では,県外から多くの間接雇用労働者が転入し,その受け皿として賃貸住宅の建設が活発化した.しかし転入した間接雇用労働者の中には,住民票を移していない人も少なくなかった.2008年秋の金融危機を契機として,間接雇用労働者を対象とする雇用調整が実施されると,大分県内の自治体は雇用創出と住宅支援を軸とする緊急雇用対策を打ち出した.しかしそれに対する間接雇用労働者の反応は予想以上に弱いものであった.筆者は,その理由を間接雇用労働者の多くが県外からの転入者であった点に求めたい.「根付きの空間」を大分県に移すつもりで来た間接雇用労働者はわずかであり,それゆえ彼/彼女らの多くは,そこに「関与の空間」を構築することなく,再び他地域へと転出していったと思われる.自治体の緊急雇用対策が一定数の間接雇用労働者を救済してきたことは正当に評価すべきである.しかしそれは,自治体の領域を超えて流動する間接雇用労働者への対策としては限界がある.効果的な対策を構築するためには,自治体の枠を超え,労働市場全体の構造を見据えた取り組みが求められる.

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