グローバル競争下における造船業の立地調整と産業集積 : 愛媛県今治市を中心として

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タイトル別名
  • Locational Adjustment and Industrial Agglomerations in the Shipbuilding Industry amid International Competition : A Case Study of Imabari City, Ehime Prefecture
  • グローバル キョウソウ カ ニ オケル ゾウセンギョウ ノ リッチ チョウセイ ト サンギョウ シュウセキ : エヒメケン イマバリシ オ チュウシン ト シテ

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抄録

造船業では,競争環境の変化に合わせて立地調整が行われ,生産拠点と地域経済の関係も変容してきた.本研究は,(1)1990年代以降の造船業の立地調整がどのように行われたかを明らかにすること,(2)舶用工業の立地変化を分析すること,(3)集積の優位性という新たな観点から造船業集積地域の特性を示すことを目的とする.大手企業は大都市圏と瀬戸内地域で脱造船化を進め,主要工場に生産拠点を集約したのに対して,瀬戸内地域の中小企業は当該地域の生産を拡大させた.その結果,造船業の中心が大手企業から中小企業へ,大都市圏から瀬戸内地域へと移った.造船業の立地調整に連動して,サプライヤーシステムである舶用工業の中心も大都市圏から瀬戸内地域へと移った.しかし,阪神の舶用工業は海上輸送される主機を製造する企業が多く,依然として阪神に残存している.愛媛県今治市には瀬戸内地域の中小造船企業の本社機能が集中し,さらに陸上輸送される製品を製造する中小舶用メーカーや個人経営船主,商社などで構成される独自の複合的集積を形成し,集積内部の各主体は人的関係で強固に結合している.集積内部には,「無尽の会」という利害調整を行う独特な組織が存在する.無尽の会によって,今治市の造船業集積内の相互依存的で水平的な企業間関係が維持されている.さらに,他地域では得られないインフォーマルな情報へのアクセスも確保されていることが今治の地域的優位性につながっている.

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