石油コークスの黒鉛化と湿式酸化反応性

  • 田川 博章
    日本カーバイド工業株式会社魚津工場研究所
  • 中島 斉
    日本カーバイド工業株式会社魚津工場研究所

書誌事項

タイトル別名
  • Graphitization and Wet Oxidizability of Heat-treated Petroleum Coke

抄録

炭素の黒鉛化という構造の変化によって,化学反応性がいかに変わるかということを明らかにするため,化学反応性の尺度の一つとして重クロム酸カリウムのリン酸溶液による湿式酸化反応を選んだ。炭素としては,石油コークスを使い,1100,1380,1660,1950,2250,2600,2800℃の各温度で黒鉛化し,X線回折によって(002)の面間隔を調べ黒鉛化度をきめた。d002はそれぞれ3.458,3.440,3.438,3.435,3.396,3.388,3.376Åである。これら黒鉛化した試料1gを重クロム酸カリウム10gと50ccのリン酸からなる酸化液で反応させた。反応時間t,発生する炭酸ガス量VとはV=atb(a,bは定数)の関係があり,bは黒鉛化の温度できまる因子である。炭酸ガス50ccを発生するのに要する時間から反応速度をきめた。速度は1100℃から2250℃までの範囲では温度の上昇とともに増加するが,2600℃と2800℃では値が1100℃程度の大きさになる。活性化エネルギーは1100℃の加熱試料では18.2,1380℃では18.6,1160℃と1950℃では20.1,2250℃では19.5,2600℃では17.6,2800℃では16.8kcal/molである。1950℃までの増加は鎖状炭素が2次元的拡がりを持った構造へ移り変わる無定形炭素自体の構造変化であり,それ以上の温度での活性化エネルギーの低下は2次元構造から3次元構造への移行による反応様式の変化によるものと思われる。

収録刊行物

  • 工業化学雑誌

    工業化学雑誌 63 (10), 1690-1694, 1960

    The Chemical Society of Japan

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