ゲルマン語強変化動詞および過去現在動詞IV, V類に見られる形態的差異について

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書誌事項

タイトル別名
  • On Morphological Differences between Class IV and V Strong and Preterite-present Verbs in Germanic: A Critical Examination of Schumacher’s (2005) Treatise and a New Proposal Based on Morphological Conflation
  • ――Schumacher(2005)論考の批判的考察と形態的混交説からの提案――

抄録

<p>ゲルマン語強変化動詞(strong verbs)の過去形と過去現在動詞(preterite-present verbs)の現在形は,ともに印欧祖語の完了形を継承しているという見解が従来の印欧語比較言語学研究において最も受け入れられてきた。しかしながら,IV, V類の動詞については,強変化動詞過去複数形では語根に長母音をもつ形態(*bǣr-あるいは*1r- ‘carried’, *lǣs/z-あるいは*1s/z- ‘collected’など)が生じ,過去現在動詞現在複数形では語根にゼロ階梯母音を反映する形態が生じる(e.g. *mun- ‘think’, *nuǥ- ‘are sufficient’)。完了形のみからの発達とする従来の説では,この差異について十分な歴史的説明が与えられていない。Schumacher(2005)はこの見解に基づく新たな研究であると言えるが,彼の「bigētun-規則」に基づく論考においても,当該の形態的差異については十分な説明がなされていない。本稿では,Schumacher(2005)の論考も含め,「完了形のみからの発達」とする説に対する批判的考察をまず行い,その後にそれとは異なる立場から,当該の形態的差異が歴史的にどのようにして生み出されたのかについての説明を試みる。それは「形態的混交説(morphological conflation theory)」と呼ぶべき立場であるが,これによれば,ゲルマン語強変化動詞の過去形は印欧祖語の完了形(perfect)と未完了形(imperfect)との形態的混交に由来するとし,過去現在動詞の現在形は印欧祖語の完了形と語幹形成母音によらざる語根現在中動形(athematic root present middle)との形態的混交に由来すると考える。強変化動詞過去形と過去現在動詞現在形は,このように発達過程が異なるために,IV, V類動詞に見られる形態的差異が生じたと考えられることを論じる*。</p>

収録刊行物

  • 言語研究

    言語研究 152 (0), 89-116, 2017

    日本言語学会

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680099513728
  • NII論文ID
    130006292084
  • DOI
    10.11435/gengo.152.0_89
  • ISSN
    21856710
    00243914
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
    • KAKEN
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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