学校教育旅行による日本型エコツーリズムの発展―長野県飯田市の事例から―

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  • Development of Japanese-style Ecotourism Based on School Excursion: A Case Study in Iida City, Nagano Prefecture

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抄録

<p>本稿は二次的自然の卓越する日本の農山村地域でのエコツーリズム開発の問題について論じる。長野県飯田市を中心に行われている学校教育旅行(その多くが修学旅行)の事例をみると,環境保全を強調するエコツアー本来の概念の適用はあまり適切とはいえない。筆者らは従来の修学旅行や遠足・研修旅行などの学校教育旅行にみられるマスツーリズム的要素と,その代替的な観光である体験ツアーや農家民泊プログラムを組み合わせていくことの重要性を強調したい。これは学校教育旅行の「エコ化」過程として位置づけられる。地域の自然環境・天然資源やその特性とともに,地元の歴史や伝統文化・生活の仕組みも学ぶ方式は,環境省によって日本型「エコツーリズム」の一つの類型と定義されている。</p><p>本稿の意義は,なぜ第三セクター方式の観光株式会社が日本の農村地域の活性化に有効かを経済的・社会的に明らかにすることである。この説明から,日本では環境省が主導した「エコツーリズム」と,農林水産省が中心になってきた「グリーン・ツーリズム」の名称上の違いと実質内容の類似性という日本的特徴を指摘する。分析考察から得られた教訓は,エコツーリズムの経済的規模を増加させることの必要性である。今後,持続可能な観光を発展させねばならないベトナムなど発展途上国では,地方政府にとって,この事業はたいへん有意義なものである。最終章では「飯田モデル」の次の2つの問題点を議論する。1)エコツアー参加者のプログラムに対する満足度,2)民泊を提供する農家世帯に対しての現状と改善のための提言。</p>

収録刊行物

  • 人文地理

    人文地理 64 (4), 299-318, 2012

    一般社団法人 人文地理学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (7)*注記

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