山梨県石和温泉の地球化学的研究

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タイトル別名
  • Geochemical Studies of Isawa Hot Springs
  • ヤマナシケン イサワ オンセン ノ チキュウ カガクテキ ケンキュウ

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抄録

石和温泉群は大蔵経寺山と笛吹川に挾まれた沖積層を掘さくして湧出したものであり,深度は約200m,泉温は30°~57℃である。1963年7月には22個の温泉井が存在している。<BR>湧出最および放熱量は表1に示すように,その測定が数箇年にわたり同時に測定したものでないが,概況は知ることができる。すなわち,湧出量の総計は48×103kl/day,放熱量の総計は22×108kcal/dayであり,これらの値は熱海温泉群とほぼ等しい。<BR>温泉の湧出している沖積層は玉石,レキ(礫)および細砂からなり,また幾層もの粘土層が存在している。<BR> 温泉水の主成分はナトリウムイオンおよび塩素イオン,副成分は硫酸'イオンであり,pHは7.7~8.6,蒸発残留物は158~883mg/lである。温泉井の掘さく途中で種々の深度の水をとって,その化学分析を行なった。この結果から不透水層である粘土層を抜けると温泉脈が存在し,幾層もあるこの粘土層を抜けるごとに,泉温および塩素イオン濃度は急激に上昇するが,アルカリ度は減少することがわかった。基盤および100m以浅の沖積層中の温泉水は不透水層としての粘土層が少ないため,地下水の混入が多く,地下水から供給されると考えられる全炭酸の含量が多く,粘土による収着のないため,カリウム含景の割合が大きく,硫化水素は含有しない。しかるに,100m以深の沖積層中から湧出する温泉水は粘土層が幾層も存在するため,地下水の影響は少なく,したがって泉温は高く,カリウムおよび全炭酸含量は少なく,また硫化水素を含有している。

収録刊行物

  • 日本化學雜誌

    日本化學雜誌 85 (10), 606-612,A49, 1964

    The Chemical Society of Japan

被引用文献 (1)*注記

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