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- 古殿 幸雄
- 近畿大学経営学部経営学科
説明
<p>マイケル・E・ポーターは,その著書『競争の戦略(Competitive Strategy)』の中で,業界内での競争状態を決めるのは,基本的に5つの要因であることを示し,この5つの競争要因から業界の構造分析を行うことを提案した.そして,この技法がファイブフォース分析と呼ばれるようになった.ここでいう業界とは,互いに代替可能な製品やサービスを作っている,あるいは提供している企業の集団のことである.また,5つの競争要因は,「新規参入業者の脅威」「既存競争企業間の敵対関係」「代替品の脅威」「買い手の交渉力」「売り手の交渉力」である.例えば,「新規参入業者の脅威」では,①規模の経済性,②製品の差別化,③巨額の投資,④仕入先変更コスト,⑤流通チャネルの確保,⑥規模とは無関係なコスト面での不利,⑦政府の政策・法律による規制などの参入障壁について分析する.また,過去に参入業者に対する既存業者からの報復があったか,参入を抑える価格になっているかなどについても検討を行う.このような分析を5つの競争要因それぞれに対して行うことで,業界の競争状態を分析することができる.ファイブフォース分析により,業界内の競争に影響を及ぼしている要因とその根底にある原因を突き止めれば,業界内における自社の位置(Position)あるいはこれから参入しようとする業界内での位置を確認し,自社の強みと弱みを見つけることができる.効果的な競争戦略は,5つの競争要因に対して,防御できる位置をつくり出すための攻めのアクション,あるいは防御のアクションをとることである.そして,防御可能な位置をつくるためには,3つの基本戦略:コストリーダーシップ戦略,差別化戦略,集中戦略がある.</p><p>なお,ポーターの経営戦略論は,第1世代(業界選択)と呼ばれ,バーニーのRBV(Resource-Based View)による経営戦略論が第2世代(個別企業の内部資源)と呼ばれている.第1世代と第2世代で,企業業績のばらつきの約60%が説明できるとされており,残り40%を説明する理論として,不確実性を重視する経営戦略論(第3世代)が登場する.そして現在,これらに分類されない経営戦略論も議論されている.</p>
収録刊行物
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- 知能と情報
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知能と情報 28 (1), 16-16, 2016
日本知能情報ファジィ学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680163287936
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- NII論文ID
- 130006351448
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- ISSN
- 18817203
- 13477986
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- Crossref
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可