アトピー性皮膚炎を難治化させる黄色ブドウ球菌定着・感染症

DOI
  • 岩月 啓氏
    岡山大学大学院医歯学総合研究科 皮膚・粘膜・結合織学教室
  • 大野 貴司
    岡山大学大学院医歯学総合研究科 皮膚・粘膜・結合織学教室
  • 山崎 修
    岡山大学大学院医歯学総合研究科 皮膚・粘膜・結合織学教室

書誌事項

タイトル別名
  • Exacerbation of Atopic Dermatitis by Staphylococcal Colonization

説明

アトピー性皮膚炎の増悪因子の一つとして黄色ブドウ球菌は重要である。黄色ブドウ球菌表面のタイコ酸はTh2型免疫応答へシフトさせ,protein Aは表皮角化細胞からIL-18を持続的に産生させる。Enterotoxin A(SEA)とB(SEB)は,正常表皮角化細胞にICAM-1 やHLA-DRを発現させる。また,アトピー性皮膚炎患者の半数以上はSEAまたはSEBの両方あるいはいずれか一方に対するIgE型抗体を有する。SEBの経表皮的感作によって真皮に好酸球や単核球細胞浸潤を誘導でき,Th2型サイトカインであるIL-4 mRNA発現を起こすが,Th1型サイトカインのIFN-γは発現しない。最近,スーパー抗原によって制御T細胞(Treg)の機能である抑制効果が失われることが示された。黄色ブドウ球菌はその菌体成分や外毒素によってアトピー性皮膚炎を増悪させる。しかし,皮膚に定着している黄色ブドウ球菌を完全に除菌し,無菌状態に保つことはできない。角層内でバイオフィルムに包まれて静止期にあるような定着(colonization)した黄色ブドウ球菌に対しては,抗菌療法も消毒も十分な効果発現は期待できない。皮膚を清潔に保ち,適切なアトピー性皮膚炎治療を実施することにより,黄色ブドウ球菌を増えすぎないようにコントロールして,正常細菌叢と仲良くするストラテジーが理想的と思われる。

収録刊行物

  • 皮膚の科学

    皮膚の科学 5 (Suppl.7), B29-B32, 2006

    日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680165414016
  • NII論文ID
    130004934485
    130005404770
  • DOI
    10.11340/skinresearch.5.suppl.7_b29
  • ISSN
    18839614
    13471813
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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