カンジダ属菌による真菌性腹膜炎を起こした犬の1例

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タイトル別名
  • Fungal Peritonitis Due to Candida albicans in a Dog

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説明

9歳10カ月齢のビーグルに対し小腸腺癌の切除手術を行ったところ,術後に食欲廃絶と嘔吐の持続,腹水貯留がみられた。腹水検査で細菌に加え仮性菌糸の形成をともなう酵母様真菌の存在が確認され,術部の裂開にともなう真菌性腹膜炎と診断した。真菌培養ではカンジダ属菌(Candida albicans)が検出された。再手術で裂開部の再縫合と洗浄を実施し,抗真菌薬であるフルコナゾールを投与したところ,治療には良好に反応し,再発もなく完治した。本症例では外科手術のほか抗菌薬の投与や腹腔ドレーンの設置などが真菌性腹膜炎の発症に関連したものと考えられた。細菌性腹膜炎に対する経験的な治療が奏功しない場合には,特に発生リスクの高い症例においては鑑別診断として真菌性腹膜炎を考慮するべきであると思われた。獣医学領域における真菌性腹膜炎の発生は稀ではあるが,医学領域では死亡率の高い疾患であると報告されているため,今後の症例の蓄積が望まれる。

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