日本総合健診医学会 第45回大会・シンポジウム3<br>健診で診る家族性高コレステロール血症:早期診断・早期治療の重要性<br>〈基調講演〉健診における家族性高コレステロール血症の早期診断・早期治療の重要性~日本動脈硬化学会からのメッセージ~
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- 山下 静也
- 地方独立行政法人りんくう総合医療センター 大阪大学大学院総合地域医療学寄附講座
書誌事項
- タイトル別名
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- Importance of Early Diagnosis and Treatment of Familial Hypercholesterolemia in Health Examination: Messages from the Japan Atherosclerosis Society
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説明
家族性高コレステロール血症(FH)は常染色体優性遺伝疾患で、LDL受容体及び関連蛋白の遺伝子異常によって血清LDL-Cが増加する。特徴はアキレス腱等の腱黄色腫や結節性黄色腫、早発性冠動脈疾患であり、高LDL-C血症を家族内に認める。肝細胞から分泌されるPCSK9の機能獲得型変異もFHの原因となる。日本動脈硬化学会(JAS)では動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版を発行し、第5章に独立してFHの診断基準、治療の指針が記載された。PCSK9変異も含めると、ヘテロ接合体は200-500人に1人、ホモ接合体は16-100万人に1人との報告もあり、FHは高頻度の遺伝性疾患であるが、我が国でFHと診断されている者は1%未満に過ぎず、健診医学的にもその認知と早期スクリーニング法の確立は重要な課題である。FHは薬物治療でLDL-C値の低下が可能であり、早期診断・治療により動脈硬化の発症・進展を抑制できる。治療にはスタチンかつ/または小腸コレステロールトランスポーター阻害薬を併用し、効果不十分な場合はPCSK9阻害薬かつ/またはレジンかつ/またはプロブコールを併用する。更に効果不十分な場合はLDLアフェレシスを行う。FHホモ接合体や重症ヘテロ接合体ではLDLアフェレシスの適応となる。日本動脈硬化学会では成人及び小児FHに対する診療ガイドを作成したが、一次予防のLDL-C管理目標値は100mg/dL未満で、目標値に到達しない場合でも、未治療時のLDL-C値の50%未満を治療目標とすることも可とする。しかし、最近PCSK9阻害抗体医薬が市販され、LDL-Cの顕著な低下も可能となったため、二次予防ではLDL-C<70mg/dLを目指す。小児のFHは従来生活習慣改善療法とレジン投与が第一選択となっていたが、日本小児科学会と本学会との合同で、小児FH診療ガイドを作成し、スタチンを第一選択薬とした。JASではFH啓発のため、FH Foundationやヨーロッパ動脈硬化学会(EAS)、日本心臓病学会とも連携し、世界FH Dayに合わせて市民公開講座、医師向け講習会、マスコミ向けプレスカンファレンス等も行い、FHの啓蒙を行っている。FHは早期発見・早期治療が極めて重要であり、今後も本学会が中心となってFHの啓発活動を行っていきたい。
収録刊行物
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- 総合健診
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総合健診 44 (6), 838-845, 2017
一般社団法人 日本総合健診医学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680175620480
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- NII論文ID
- 130006407802
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- ISSN
- 18844103
- 13470086
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- Crossref
- CiNii Articles
- OpenAIRE
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可