日本総合健診医学会 第45回大会・特別講演1<br>人間ドックと脳ドック

  • 篠原 幸人
    国家公務員共済組合連合会立川病院神経内科 東海大学東京病院神経内科 日本人間ドック学会

書誌事項

タイトル別名
  • Health Check-up System (Human Dock) and Brain Check-up System (Brain Dock) in Japan

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抄録

1954年に人間ドックが本邦で初めて産声をあげたのと同様に、脳ドックも1988年に本邦で初めて生まれたものである。脳ドックは、非侵襲的な頭部CTの普及に加えて、MRI、頸部超音波エコーなどの開発により、一般の人間ドック健診の盲点をカバーする部分ドックの一つとして広まりつつある。現在、脳ドック施設数は約600(学会認定施設255)で、更に増加傾向にある。<br> 本講演では脳ドックの標準検査項目を紹介するとともに、演者が関係する山中湖ハイメディックの初期のデータ(対象3,780例、平均年齢55歳、男性2,417例)から、一見健常にみえる受診者に高頻度にみられるMRI・MRAの異常、特に最も多く発見される無症候性脳虚血性病変(いわゆる隠れ脳梗塞と白質病変)に対する各種人間ドック健診の検査成績の関係、また予後調査などについて概説した。<br> いわゆる隠れ脳梗塞は280例(7.4%)に観察された。また、白質病変は脳室周囲高信号(T2またはFLAIR画像)14.4%、深部皮質下白質高信号18.9%、無症候性脳出血0.1%、未破裂脳動脈瘤は4.2%で認められた。<br> 無症候性脳梗塞発現に有意に関係する因子は、年齢、糖代謝異常、高血圧、性別(男性)などで、無症候の虚血性白質病変もほぼ同様の傾向を示していた。<br> これらの受診者を平均38か月観察した結果、1.3%に相当する27症例が各種の脳卒中を発症した。特に虚血性脳血管障害発症例の予知因子としては、統計学的には頸動脈狭窄、脳内血管の狭窄、無症候性脳梗塞などの存在とともに、糖代謝異常、高血圧、心房細動、喫煙などの因子が影響すると考えられた。<br> トータル・ヘルスケアの意味からも、人間ドックと脳ドックのコラボレーションは重要であり、今後は疾患の早期発見・治療のみならず、その発現予防すなわち一次予防にも力を注ぐべきである。

収録刊行物

  • 総合健診

    総合健診 44 (6), 832-837, 2017

    一般社団法人 日本総合健診医学会

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