携帯電話を利用した市民参加型生物調査の手法確立

  • 大澤 剛士
    独立行政法人農業環境技術研究所農業環境インベントリーセンター
  • 山中 武彦
    独立行政法人農業環境技術研究所農業環境インベントリーセンター
  • 中谷 至伸
    独立行政法人農業環境技術研究所農業環境インベントリーセンター

書誌事項

タイトル別名
  • Establishing a canonical procedure for collecting biodiversity information from citizen scientists using mobile phones
  • ケイタイ デンワ オ リヨウ シタ シミン サンカガタ セイブツ チョウサ ノ シュホウ カクリツ

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抄録

市民参加型の生物調査は、広域多点におけるデータ収集や長期観測が実現できるという利点がある反面、生物を全く知らない一般市民には参加への敷居が高い場合が多い。さらに調査への参加者を十分に確保できない、イベントの調整等、調査を実施すること自体に手間がかかるといった諸問題がある。本研究は、現在ほぼ全国民が所持している携帯電話の付随機能であるデジタルカメラと電子メールを利用し、特別な知識等を持たない一般市民が気軽に参加できる生物調査のプロトコルを確立することを試みた。まず位置情報を付与したデジタル写真をメールで送付すると、自動的に撮影場所を地図に投影してくれるWebシステムを導入した。次に、4都道府県地域において、地域の博物館学芸員、学校教諭らの協力のもと、そのシステムを利用した市民参加型の生物調査を実施した。最後に、調査へ協力した市民が調査結果を閲覧するためのWebサイトを構築し、一般公開した。本研究により、一般参加型調査を広げるために重要な3つの条件、(1)簡便なツールの開発、(2)専門家との協力・連携体制の確立、(3)参加者への利益還元の明示、の全てを満たすことができた。今回提示したような、市民参加型の調査法を体系的に確立し、実践していくことによって、日本全体の生物多様性の現況を市民全体で監視することが可能になる。このような市民を巻き込んだ取り組みは、広くコンセンサスが得られる保全戦略を構築していくうえで、重要な役割を持つだろう。

収録刊行物

  • 保全生態学研究

    保全生態学研究 18 (2), 157-165, 2013

    一般社団法人 日本生態学会

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