相模湾に生息するニシキウズガイ科腹足類ダンベイキサゴの殻に記録される酸素同位体比プロファイルからみた殻成長

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  • Shell Growth of <i>Umbonium</i> (<i>Suchium</i>) <i>giganteum</i> (Gastropoda: Trochidae) in Sagami Bay Based on Oxygen Isotope Profiles
  • Shell Growth of Umbonium (Suchium) giganteum (Gastropoda: Trochidae) in Sagami Bay Based on Oxygen Isotope Profiles

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抄録

<p>本研究では佐藤・他(2009)が1999年11月25日に採集し,成長分析をおこなった相模湾産の2標本について,酸素同位体比分析の手法を用いて,ダンベイキサゴの殻成長を推定した。酸素同位体比分析を行った結果,両個体は類似した酸素同位体比プロファイルの変動パタンを記録しており,δ18Oの変動は3回の極小値と3回の極大値を含む,全体として緩やかな増加と比較的急な減少を示した。相模湾のダンベイキサゴは生息場所から淡水の影響は限定的であると推定される。つまり,殻に記録されているδ18O の値は海水温の変動を示すことから,両分析個体は相模湾の1997年春季から1999年秋季の海水温を記録していることになる。殻に記録される酸素同位体比値と殻表面に見られる明瞭な成長輪の関係から、この明瞭な成長輪は急激な海水温の低下に伴って形成されることが明らかとなった。相模湾のダンベイキサゴは主に海水温が低下する時期である秋季から冬季にかけて放精・放卵を行うことが知られている。つまり,殻表面の明瞭な成長輪は放精・放卵によって形成されていると考えられる。これらの成長輪は同時期に採集された個体にも同様に見られることから,本地域におけるダンベイキサゴは秋季に1回もしくは2回の放精・放卵が生じていると推定された。しかしながら,分析個体の前半部分のδ18O の値から春季もしくは夏季の前半にも放精・放卵が生じていると推定され,殻前半部分に放精・放卵に伴う明瞭な成長輪が形成されないのは成長速度が速いためであると考えられる。本研究の酸素同位体比分析から推定される成長速度は,幼貝部分において,先行研究の推定よりもわずかに速いことが明らかとなった。</p>

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