ハスノハカシパンに寄生するトクナガヤドリニナの宿主発見機構

  • 松田 春菜
    Study Support Center, Shikoku University Graduate School of Biosphere Science, Hiroshima University
  • 浜野 龍夫
    Department of Applied Aquabiology, National Fisheries University Institute of Socio-Arts and Sciences, The University of Tokushima
  • 長澤 和也
    Graduate School of Biosphere Science, Hiroshima University

書誌事項

タイトル別名
  • Factors Affecting Re-infection by <i>Hypermastus tokunagai</i> (Caenogastropoda: Eulimidae) of Its Host, the Sand Dollar <i>Scaphechinus mirabilis</i> (Clypeasteroida: Scutellidae)
  • Factors Affecting Re-infection by Hypermastus tokunagai (Caenogastropoda: Eulimidae) of Its Host, the Sand Dollar Scaphechinus mirabilis (Clypeasteroida: Scutellidae)

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説明

ハナゴウナ科のトクナガヤドリニナHypermastus tokunagaiは宿主であるハスノハカシパンScaphechinus mirabilisの腹面に外部寄生する種であるが,宿主から離れやすく,底質中からも生きた個体が見つかっている。そこで,宿主から離れたトクナガヤドリニナが再び寄生できるかを野外実験で確かめるとともに,どのようにして宿主を探索・認識するのかを室内実験で検討した。まず,寄生されていないハスノハカシパンをケージに入れ,海底で一定期間置いた後に取り上げたところ,成体のトクナガヤドリニナが見出され,底質中にいたトクナガヤドリニナが宿主を見つけ出して寄生できることが確かめられた。明暗の選択性実験では,トクナガヤドリニナは明るい領域を有意に好み,白黒の選択性実験では有意に白い領域を好む傾向を示した。白黒の境目では頻繁に留まる様子が観察されたことから,明るい環境下で白黒のコントラストを感知する可能性が高いことが示唆された。一方で,底質上にカシパンに見立てた黒色板を置くと潜砂して暗い領域に集まる個体が多く観察され,黒色板からカシパンの化学物質を溶出させた条件では有意に集まる傾向を示した。ハスノハカシパンの化学刺激だけで宿主を見出すことはできなかったことから,宿主を見出し,近づくプロセスの中で視覚の果たす役割があると推察された。宿主特異性を有するトクナガヤドリニナにおいて,化学刺激や接触刺激の存在が最終的に宿主に寄生する上での決めてとなる可能性が考えられる。

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