ハスノハカシパン個体群における寄生性巻貝トクナガヤドリニナの分布様式

  • 松田 春菜
    Graduate School of Biosphere Science, Hiroshima University
  • 浜野 龍夫
    Institute of Socio-Arts and Sciences, the University of Tokushima
  • 長澤 和也
    Graduate School of Biosphere Science, Hiroshima University

書誌事項

タイトル別名
  • Spatial Distribution Patterns of the Parasitic Gastropod <i>Hypermastus tokunagai </i>(Eulimidae) in Populations of its Echinoid Host <i>Scaphechinus mirabilis </i>(Scutellidae)
  • Spatial distribution patterns of the parasitic gastropod Hypermastus tokunagai (Eulimidae) in populations of its echinoid host Scaphechinus mirabilis (Scutellidae)

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抄録

ハナゴウナ科トクナガヤドリニナHypermastus tokunagaiは不正形ウニ類のハスノハカシパンScaphechinus mirabilisの体表に寄生する。ハスノハカシパン個体群におけるトクナガヤドリニナの分布様式を明らかにするため,山口県東部の瀬戸内海沿岸2ヶ所(馬島,尾国)の個体群で枠取り調査を行った。馬島沿岸におけるハスノハカシパン個体群は帯状を呈しており,その密度は帯の中心線に当たる部分で高かった。1 m2当たりのトクナガヤドリニナ個体数はハスノハカシパンの高密度域で高かったが,寄生率(寄生を受けた宿主の割合)や平均寄生数(宿主1個体当たりの平均寄生数)は,ハスノハカシパンの分布縁辺部の低密度域で高かった。この結果は,トクナガヤドリニナの寄生がハスノハカシパンの分布範囲全体に及んでおり,特に宿主のハスノハカシパンが多い場所ほど多く分布していたことを示す。また,尾国沿岸においてトクナガヤドリニナの寄生状況と潮位,アマモの分布,底質との関係を調べたところ,潮下帯上部のハスノハカシパンほど頻繁かつ多数の寄生を受けていることが明らかとなった。このような分布様式を示す要因として,トクナガヤドリニナの幼生が潮下帯においてハスノハカシパン個体群の広範囲に浮遊・到達し,その上部及び高密度域により多く定着する可能性が考えられる。

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