絶滅が危惧されるイチョウシラトリ(二枚貝綱:ニッコウガイ科)の分類学的再検討

  • 氏野 優
    Department of Biological Sciences, Graduate School of Science, The University of Tokyo
  • 松隈 明彦
    Kyushu University Museum

書誌事項

タイトル別名
  • Taxonomic Revision of <i>Serratina capsoides </i>(Lamarck, 1818) (Bivalvia: Tellinidae), an Endangered Species in Japan
  • Taxonomic Revision of Serratina capsoides (Lamarck, 1818) (Bivalvia: Tellinidae), an Endangered Species in Japan

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抄録

イチョウシラトリ“Serratina capsoides (Lamarck, 1818)”はインド・西太平洋に広範囲に分布する種として認識されており,九州以北に分布する個体群は絶滅の危機にある。本研究は,本種の将来的な保護計画の策定のための情報を提供する目的で殻形態観察と分子解析の両方を用いて分類学的再検討を行った。ミトコンドリアCO1遺伝子および核の5.8S rRNA + ITS2 + 28S rRNA遺伝子のDNA解析から,本種は3つの遺伝的に異なるグループに分けられることが明らかになった。新たに採集した標本と博物館所蔵標本の形態観察からもこの3つのグループは認識され,タイプ標本の検討からこれらは3つの種,ヌノメイチョウシラトリS. capsoides, イチョウシラトリSerratina diaphana (Deshayes, 1855), トゲイチョウシラトリ(新称)Serratina pristis(Lamarck, 1818)からなることが明らかになった。本研究の結果からS. capsoidesと認識されていた日本本土の個体群はS. diaphanaであることが確認された。S. diaphanaの分布はS.capsoidesに比べ,より限定的で絶滅のリスクが高い。しかしながら,S. diaphanaの保護計画の策定のためには,今後本種の分布や遺伝的多様性に関するより多くのデータが必要である。

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