オオサンショウウオが遡上可能な堰の条件

  • 田口 勇輝
    大阪府立大学大学院農学生命科学研究科:(現)京都大学大学院地球環境学舎:(現)兵庫県立人と自然の博物館
  • 夏原 由博
    京都大学大学院地球環境学堂

書誌事項

タイトル別名
  • Requirements for small agricultural dams to allow the Japanese giant salamander (<i>Andrias japonicus</i>) to move upstream
  • オオサンショウウオ ガ ソジョウ カノウ ナ セキ ノ ジョウケン

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説明

オオサンショウウオの生息場所である河川は、取水堰や砂防堰堤によって著しく分断化されている。本研究は複数の取水堰が存在する調査地において、堰直下で発見されるオオサンショウウオの個体数とそれらの行動観察を通じ、堰による移動阻害の傾向を示すとともに、遡上可能な堰の条件を明らかにすることを目的とした。兵庫県篠山市の羽束川1533m区間で2004年7月〜2005年12月に月4〜8回の継続調査を行い、標識再捕獲法により本種を104個体識別した。再捕獲の結果、調査地内にある6つの堰全てにおいて10個体以上が遡上したことを確認できたが、明らかに堰直下で多くの個体が発見されていた。堰直下10m以内の密度(A)と、堰直下以外の調査区間1473mの密度(B)を年ごとに比較すると、2004年では8月にピーク(AはBの67.5倍)があり、2005年には7月にピーク(AはBの71.4倍)があった。これらのピークは繁殖期直前の遡上期にあたることから、遡上行動が阻害された結果として堰直下で多くの個体が発見されたと考えられる。特に堤高が80cm以上でスロープ状の迂回路がない堰では多くの個体が見つかった。しかし、そのような堰においても、堤体に足がかりとなる凹凸があるか、堤体から15m以内の護岸沿いにスロープ状の迂回路がある堰では遡上個体を確認できた。よって、このような堰の条件がオオサンショウウオの遡上を可能とすることが示唆された。

収録刊行物

  • 保全生態学研究

    保全生態学研究 14 (2), 165-172, 2009

    一般社団法人 日本生態学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (31)*注記

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