行政事務職が認識した行政保健婦・士の専門能力と活動,および今後の役割への期待 : 4自治体の介護保険システム導入過程における協働の事例から

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  • Local Government Officials' Views and Expectations of the Public Health Nurse's Specialist Role : Four Case Studies in the Cooperation between Local Government Administrators and Public Health Nurses in the Processes of the Local Government's "Long-Term Care Insurance" System

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目的:自治体の介護保険システムの構築過程において,保健婦・士(以下,保健婦とする)と協働した事務職が認識した保健婦の専門能力と活動,および期待する役割を明らかにする.方法:調査対象地域は,人口規模および介護保険システムの特性の異なる4自治体A(人口17万人),B(10万人),C(4万人),D(50万人)を選択した.調査対象者は,各自治体の介護保険システムの構築に中心的に携わった事務職1名と保健婦1名とした.事務職に対する調査項目は,介護保険システムに関する理念および運営方法,システム構築のための組織および過程,事務職が認識した保健婦の専門能力と活動,および期待する役割とした.保健婦に対する調査項目は,介護保険システムの構築の過程で行ったこととその意図とした.各対象者には,研究者グループが個別に半構造化面接調査を実施し(2000年5〜8月),自治体別にまとめて比較した.結果:1)自治体Bでは保健福祉専門職を急激に増員していた.C,Dでは住民活動が比較的活発であり,Dは福祉職および民間事業者の充足度が比較的高かった.2)Aと他の3自治体では,事務職の認識に大きな違いがみられた.Aでは,保健婦の活動が健康診査中心と認識されていたが,保健婦の活動への理解をもとめる保健婦の意図的関わりを通して,事務職は身体的アセスメント能力を認識し,介護保険訪問調査の調査票作成,困難事例や民間事業者の育成支援を期待していた.B,C,Dではこれまでの活動をもとに,ケアアセスメント能力や他職種を含めたコーディネート能力を有すると認識され,高齢者のニーズ把握のための実体調査(B),元気高齢者のための企画(C),サービス基盤のニーズ抽出(D)を期待されていた.特にC,Dでは,Bのように実態調査をする以前に,保健婦は地域のケアニーズを把握しており,それをもとに介護保険システム構築の基盤を構築し(C),他職種に伝えることができる(D)と認識されていた.こうした事務職の認識をもとに,老人保健法関連の事業の見直し(B),介護予防事業(C,D)を期待されていたが,共通して,全体的な視野をもとに活動することへの期待がなされていた(B,C,D).Aでは,明確な保健・介護予防事業への期待は表出されなかった.結論:保健婦には個別の援助技術と地域全体をみた企画調整能力が期待されるが,介護保険システムの基盤となる住民の活動,他職種および民間事業者の充足度によりその役割は異なると考えられた.

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